家庭教師のゴールは、知識や勉強法を与えることではありません。大切なのは「身につく」ようにしてあげることです。コミュニケーションと同じく、相手にどれだけ伝わったかが重要なのです。

この基本原則を押さえ「上手な教え方」をマスターしてください。

この記事では、家庭教師に限らず「教える人」の基本的な心構え、教え方のコツを解説していきます。

家庭教師とはどんな仕事?

家庭教師の仕事を知らない人は、あまりいないと思いますが、今一度紹介します。

家庭教師とは、生徒の家庭に訪問し、学習をサポートする私教師のことです。マンツーマンで生徒のレベルに合わせて授業を行います。
教師には、大学生や社会人などのプロもいます。では、具体的にどんな仕事をするのでしょう?

個別の授業

各ご家庭に訪問し、生徒とマンツーマンで授業を行います。

ご家庭からの希望によって、近所のカフェや図書館などで指導する場合もあります。また、兄妹がいて同時に指導する場合もあります。

基本的には、「生徒のレベルに合わせて」問題の解説や勉強法などを決めらえた時間で指導していきます。

学習管理

週に数回の授業に加え、生徒の日々の学習を管理してあげることも重要な仕事。

家庭教師として指導する子の多くは、勉強が苦手で「勉強習慣」がありません。

そういった子には、授業で勉強のやり方を教え、普段の学習を先生がしっかり管理してあげましょう。先生がしっかり管理してあげることで、徐々に先生がいなくても「自立して」勉強できるようになります。

学習を管理する際には、多くの家庭教師センターでは、独自の勉強計画帳を使用しています。

ある程度、自立して勉強できる子には、手帳を使って「生徒本人」に学習管理をさせるのも良いでしょう。

進路相談

指導するお子さんが受験生であれば、受験に関する相談にものりましょう。

受験生の悩みは、志望校・受験勉強のやり方・入試問題などさまざまです。

指導する先生は、受験を経験されていると思うので、ご自身の経験を踏まえ、受験生の心理を理解した上で、アドバイスしてあげると良いでしょう。

また、受験情報に関してわからないことがあれば、家庭教師センターに確認し、正確な情報を伝えましょう。

もし個人契約の方の場合は、教育委員会のHPに掲載されている入試情報を確認しましょう。入試日程や合格者数などが掲載されています。

保護者との面談

保護者の方との面談も大切な仕事です。
頻繁に報告する必要はありませんが、

  • 勉強の様子
  • やる気、集中力
  • お子さんの悩み

などを定期的に保護者の方にお伝えすることで、安心して任せてもらうことができます。

また、生徒の状況を報告することに加え、保護者の悩みにも対応することも大切です。思春期の子どもの場合、親には本音を話さないこともあるので、生徒との会話で気づいたことがあれば、保護者の方にも報告しましょう。

ダメな教え方とは?

情熱がない

教えることに情熱がなければ、生徒の学習意欲を高めることはできません。

「この先生やる気ないな」というのは、生徒にすぐ伝わります。

また、教えることに自信がない先生にも、当然、情熱を感じません。そのことが生徒の理解力を下げてしまいます。

力みすぎる

「情熱をもて」とは言っても、力みすぎてはいけません。

悪い例が、熱血すぎるコーチや度が過ぎる教育ママ。

先生がどんなに一生懸命でも、生徒のペースを無視すれば、ついていくことができず、成果が上がりません。

先生は、冷静に生徒の様子を観察し、それに合わせた指導をすることが大切です。

押し付ける

自分の勉強法に自信がある人ほど、押し付ける指導をしてしまいます。

「オレと同じようにやれ!」「どうしてお母さんが教えた通りにできないの!」

しかし、こういった言葉で生徒の学習意欲は高まりますでしょうか?

大切なことは、生徒に自発的に学ぼうという意欲を持たせること。どれだけ効率的な学習法でも、それを押し付けられた生徒がやる気を失ってしまえば、元も子もありません。

逆に、効率の点では今一つの勉強法でも、学ぶ本人の目が輝いていれば、それなりの効果があるはずです。

褒めない

子どもの場合、先生に褒められることで学習意欲が高まります。

もちろん、「叱って伸ばす」べき生徒もいるかもしれませんが、全く褒めない教え方ではいけません。

なぜなら、叱られてばかりいると、生徒は委縮してしまい、かえって学習効果を落としてしまうからです。

ですから、宿題をしないなど、叱るべきとき以外で全く褒めないような教え方には気を付けましょう。生徒のやる気と学習効果を下げてしまいます。

一方通行に話す

教えることが、先生から生徒に一方通行に知識を伝達するだけではいけません。

なぜなら、生徒が受け身では効果的に教えることができないからです。

時には、生徒に質問したり、考えさせたりして、生徒の理解度を確認しましょう。

教えるとは、先生が説明というボールを投げたら、生徒から理解というボールを受け取るキャッチボールのようなもの。自分が投げたボールに無関心ではいけません。

詰め込みすぎる

食べ物と同じように、詰め込みすぎては消化不良を起こしてしまいます。

ですから、生徒の理解度に合わせて、教える内容も細かく分けてみましょう。

野球のバッティングでも、いっぺんにグリップの握り方、バットの振り方、足の上げ方を教えられても理解できません。

大切なのは、細部に分け、一つずつクリアできるようにしてあげることです。

教える人の5つの心構え

先述のとおり、教えるとは「身につく」ようにしてあげること。

「身につく」とは、時間が経過しても、生徒が知識を失わないということ。つまり、先生がいなくても一人で勉強できるようにしてあげることです。

ですから、決して「説明するだけ」で終わってはいけません。

自分の説明が、きちんと「伝わったのかな?」と生徒をよく観察する必要があるのです。

これから教える立場になる方は、ぜひ「投げっぱなし」ではなく、相手にきちんと「届いたのか」を確認する教え方をマスターしてください。

生徒の長所を3つみつける

生徒についイライラしてしまう場面があります。

「なぜこれが理解できないのだろう」「何となく肌が合わない」

人間ですから仕方ないかもしれません。

しかし、あなたのそうした感情は、生徒に敏感に伝わります。逆に、あなたが生徒に好感を持っていれば、そのことが自然と態度に表れ、自然に生徒もあなたに好感を持ちます。

ですから、もし「イライラ」したり何となく肌が合わないという生徒がいたら、生徒の長所を3つ見つけましょう。そして、生徒と顔を合わせるたびに、その長所を心の中でつぶやくにしましょう。自然と苦手意識がなくなります。

プライドを捨てる

先生に求められているものは「生徒の成長」です。

生徒から尊敬されることではありません。

生徒に教える中で「答えられない」ことを質問されることがあります。そんなときは、曖昧ににごすのではなく、素直に分からないと答えましょう。

逆にそうした対応のほうが、生徒から信頼されるものです。

ですから、先生は尊敬されるべきという「プライド」が、教えることの障害となるのであれば、きっぱりと捨てる覚悟が必要です。

生徒のせいにしない

生徒が成長しないと、その責任を生徒に転嫁してしまいます。

「生徒のやる気がないから」「生徒が宿題をやらないから」……

たしかに生徒の資質に問題があるのかもしれませんが、「生徒がバカだから成長しない」と責任転嫁してしまっては、「難しい仕事はできません。私には能力がありません。」と言っているようなもの。

だいいち、優秀な生徒を教えて成果を上げることは、たいていの人ができることです。

ですから、もし生徒の成果が上がらなければ、「自分の教え方に問題はないか」「自分は信頼されているのか」など、自分が直せる所を考えるようにしましょう。

生徒の文化を理解する

自分の価値観だけで生徒に接してはいけません。

「今どきの中学生は…」「最近の若い子はダメねぇ」

こう嘆いている人は、かつて自分も大人からそう言われていたことをすっかり忘れています。

分かりやすく、効率的に教えるためには、生徒の文化を知り、それを尊重する心構えが大切なのです。

可能性をひきだす

教えるとは、生徒を先生のレベルまで引き上げることではありません。

新しい個性を開花させるお手伝いをさせてもらうくらいの気持ちです。

ですから、自分が通ってきた道を生徒に無理やり歩かせるのではなく、生徒が自分の道を切り開きながら歩いていくことを支えてあげることが大切なのです。

生徒が自分で勉強しはじめたら、あなたからすれば効率がわるくても、じっと見守りましょう。あなたの予想をはるかに超えるスピードで生徒は成長していきます。

上手に教える6つのコツ

「伝わっているか」を意識する

分かりにくい教え方をする先生は、「自分が話していることが生徒に伝わっていないかもしれない」と想像する力が欠けています。

これは、自分が理解していることを、普通に説明すれば生徒も理解してくれると思い込んでいるからです。

しかし、先生の説明がつねに伝わっているとは限りません。生徒は、何か一つでも理解できなければ、全体が理解できなくなります。

ですから、教えるときには、「今の説明でちゃんと理解できたかな」と意識しながら教えることが大切です。

「ゴール」を明確にする

教えるときには、まずは具体的なゴールを示してあげましょう。

たとえば宿題を出す場合でも、「この問題集をガンガンやっていこう!」と抽象的に説明するのではなく、「問題集を15ページまでやろう!」のように具体的に説明してあげましょう。

このように「ここまで進もう」という具体的なゴールを示すことで、「あと半分、がんばろう!」という次に進む元気が出てくるのです。

「成長曲線」を教える

学力は、はじめはあまり成果がなく、一気に上昇します。

英語でいうなれば、最初のころはどれだけ単語を覚えても、あまり成果がありません。しかし、地道に覚えていくことで、徐々に単語につながりが見え、文章を理解できるようになるのです。

このことを生徒に教えておくことで、努力をしても成果がない時期も「やがて伸びる」と信じて、乗り越えることができます。

ですから、現在の苦しみしか見えていない生徒が挫折してしまわないように、大局観をもって、やがて訪れる「大きな喜び」まで誘導してあげることが、先生としての大切な仕事です。

目標を「分解」する

受験生の目標は、志望校に合格すること。

しかし、志望校合格までの道のりは急斜面を上るようなもの。坂道が急すぎては、どこから登ればよいのかがわかりません。

ですから、生徒が到達できるレベルに目標を分解し、それぞれの部分目標ごとに理解度を確認したり、アドバイスしたり、練習させることが大切です。

山道が高すぎては、一人では登れません。しかし、先生であるあなたが、分岐点を示しサポートしてあげることで、生徒は登りきることができるのです。

褒めて伸ばす

生徒は、褒められることによって学習意欲を高めます。

褒められ、やる気があがり「楽しい」と感じるようになれば、「生徒の自主性のスイッチ」が入り、自分で考えて勉強するようになります。

ですから、この自主性のスイッチを押してあげるべく、どんな小さな成長でも褒めてあげるようにしましょう。「進歩の喜び」を感じることで、「もっとできるようになりたい」という意欲にもスイッチが入ります。

反復させて記憶定着

先述のとおり、教えるとは、「身につく」ようにしてあげることです。

そのためには、反復して教える必要があります。

一般的に、覚えた知識を「2週間で3回つかう」と記憶に定着しやすいと言われています。

ですから、一度教えたことを2週間のなかで「復習+確認」してあげることで、記憶の定着を助けてあげることができます。

補足:叱るときの注意点

叱る時には、生徒の人格を否定するように叱ってはいけません。

【悪い叱り方】
「だからお前はダメなんだ!」「お前は先生の話をちゃんと聞いていたのか?」「お前は約束も守れないのか?」

このような発言は、生徒の成長を願って教えているのではなく、あなたの感情のままに「お前(生徒)」を非難しているにすぎません。

【良い叱り方】
「できなかったのは仕方ないけど、どうしてできなかったの?」「もう一度説明するけど、次からは先生の話をよく聞こうね」

大切なことは、「お前」の否定ではなく、「こうすれば、もっと良くなるよ」と改善するためにアドバイスをしてあげることです。

家庭教師の教え方のまとめ

教える人が大切にすべきことは、「身につく」ようにしてあげること。

そのために、「自分の説明が伝わっているか」生徒をよく観察しましょう。

本記事では、とくに家庭教師の先生が大切にすべき「心構え」や「教え方のコツ」を解説しています。これから先生になる方は、ぜひチェックしてみて下さい。

(参考)
多田健次(2010),『誰でもまねできる 人気講師のすごい教え方』,中経出版
藤沢晃治(2008),『「分かりやすい教え方」の技術』,講談社
安河内哲也(2007),『できる人の教え方』,中経出版