「どうしてうちの子だけ?」

現在、小・中学校に通う子どものおよそ5パーセントがLD(学習障害)の傾向にあると言われています。

LD(学習障害)は決して「育て方」に原因があるものではありません。しかし、LDを持つ子供にはにはその子にあった「適切な指導」を考えていく必要があります。

今回は、LDを持つ子供に見られる典型例を紹介し、特徴などを解説していきます。

補足:LD(学習障害)とは

医学用語的に用いられるLDとは、「読み、書き、算数」の3つの学習における障害です。一方で、一般的に用いられるLDではより広い範囲での学習困難を指します。

LDのタイプ

私たちの脳は個人差が大きく、得意・不得意の部分の偏りがあります。いわゆる「個性」というものです。手先が器用な人、絶対音感のある人、記憶力がすごい人。それぞれが個性です。

LDはこうした個性が強く、認知に何らかの援助が必要な状態です。

皆に個性があるようにLDを持つ子供たちにも個性があります。一つだけ突出して苦手な事がある子供もいれば、全般的になんとなく発達が遅れてしまっている子供もいます。

読み、書き、算数が苦手

いろいろなあるLDのタイプの中で、最も多いタイプです。医学的な立場から「学習障害」という場合は、このタイプを指して使います。

LDの一般的なイメージはこのことに関するものが多いです。読み書きが苦手だと、学習上のあらゆる場面で障壁が生まれてしまいます。

音と文字を結びつけるのが苦手

「あ」が「A」という音を示す記号であることがなかなか理解できない。

例:「ら」を間違えて「る」と言ってしまう。

表記上のルールを守れない

「っ、ゃ、ょ」などの小さな文字を正しく発音できず、飛ばして読んだりしてしまう。また書く際にも、正しい位置に記す事ができない。

例:北海道は「ほかっいどう」って書いてしまう。

文のつながりを区切れない

文字を意味で区切って読む事ができず、逐字読みをする。

例:「道を歩いていたら虹が見えた」ミチヲアルイテイタラニジガミエタ…どういう意味?

漢字が正確に書けない

ひらがな、カタカナはかけるが、漢字がなかなか覚えられない。

例:画数が多いと全然覚えられない!

音読み・訓読みが苦手

複数の読みを持つ漢字を見て、とっさにどう読むかを判断できない。

例:「連立方程式」→れんたちほうていしき?

コミュニケーションに困難がある

ことばの問題は聞き取りや話す力のかたよりだけではありません。会話を進める力、相手の表情やしぐさから含む意味を読み取る力も該当します。

学習としての理解力だけでなく、人との関わり方に関する理解力にも問題がある事があります。

話を聞き続けられない

話を聞くときに集中力が続かないか、他の事に注意が向いてしまう。

例:えっ?テスト範囲の大事な話なのに聞いてなかった…

スムーズに話せない

言葉は理解できていても、それをうまくまとめる事ができない。また指示語が多く内容がぼんやりしてしまう事が多い。

例:だからー、あれがね!なんかね!うーんと…

聞いたことをすぐに忘れてしまう

聞いたことをとっさに頭の中に留めておけず、何度も聞き直したり、注意される。

例:授業中、先生に当てられたとき、何を聞かれているのか忘れてしまう。

雰囲気や表情を読めない

その場の空気や、相手の表情を察して会話をコントロールする事ができない。

例:お母さんが怒っていたなんて気づかなかった!

話したいことしか話さない

嘘は言わないが、その話題に相手が興味を持っているかどうかに無頓着である。

例:みんな、ゲームの話が一番楽しいに決まってるんだ!

集団でのルールが守れない

社会性の欠如は、LDの定義には含まれません。しかしながら、学力のつまづきから精神的に不安定になったり、社会性を学ぶのに時間がかかるなど、二次的におこってくる問題です。

LDをもつ子供の多くは、集団生活において「浮いている」ように思われる事があります。

人との関わりに興味がない

自分が興味がある事に熱心で、人との関わりをあまり求めない。

例:絵を描くのが楽しいから、みんなと遊ぶのなんかどうでもいいよ!

乱暴で喧嘩っ早い

我慢する力が極端に弱く、よくケンカをしてしまう。

例:僕が言ってる事が絶対正しいんだ!

適切な表現ができない

本人に悪気がない場合でも、結果的に人を傷つけてしまうことがある。

例:思ったことを言っただけなのに、みんなから怒られちゃったよ…

動作が不器用

LDの子供の中には、全身を協調させて動かすのが苦手な子供がいます。全身運動だけでなく、手先の運動にも様々な特徴が表れます。

体のあちこちを強調させることは、実は非常に高度なコントロールなのです。

字を書くのが下手

文字の意味は理解しているのだが、文字を書くのに時間がかかったり、正確に書けない。

例:普通に書いているつもりなのに「もっと丁寧に書きなさい!」って怒られちゃった…

基礎的な動作がゆっくり

歩いたり、走ったりする身体動作や、話すスピードも遅かったりする。

例:移動教室のときも、チャイムに間に合わない事がある。

細かいものを作れない

指先の作業が苦手で、紐を結ぶ、服をたたむなどの日常的作業がうまくできない。

例:靴紐が結べないから、とれないように固結びしてるよ!

運動が不得意

走るだけならいいが、全身を使った動きや複雑な運動が苦手。

例:僕はスキップとか縄跳びが苦手だよ!

場面に適した行動ができない

行動面に見られる特徴では、AD/HDと合併して多動性が目立つタイプ。一方で「動作がゆっくり」な寡動タイプも見られます。

多動に比べて寡動タイプは問題が少ないように見えますが、状況に合わせた行動が取れないという点では困難が多いです。

しなければならないことへの注意力がない

いま自分がしている事、1つの対象に向ける注意力が著しく弱い。

例:今晩のおかずはなんだろうなぁ…

自分本位のルール、こだわりが強い

しなければならない事、人から言われたやり方に柔軟に対応できず、「人の話を聞いていない」と思われてしまう。

例:宿題はノートに書いて提出と言われたのに、問題集に直接書き込んじゃったよ。

外からの刺激に対する注意力が鋭い

外からの刺激をキャッチするセンサーとしての注意力が鋭く、外界の音に注意を奪われがち。

例:授業中、道路を走る車の音や、他の教室から聞こえる声が聞こえてくるとそっちが気になっちゃう!

LDの判断

LDの判断は専門家でも難しい

LDかどうかを判断するときは、まず医師によって、他に原因がないかを確かめます。

同時に心理検査も行います。心理検査は、その時の子供の状態によって結果が変わるなど、非常に繊細な検査なのです。

子供の状態に結果が左右される検査なだけに、「絶対にLDだ」とは言えないのです。

心理検査:全体的に知能の遅れがないことを確かめます。また認知のうち「どの力にかたよりがあるのか」を確かめます。

レッテル貼りではなく、支援の切符

検査によって「LD」と名前をつけたことだけでは、何も進歩は生まれません。

しかし、検査で認知のパターンがつかめればその子供にあった教材を選び、指導方法を工夫する大きな手口となります。

LDの診断は、ネガティブな役割ではなく、その子にあった道のりを歩むための切符を手にすることなのです。

LDの診断に対して反感を覚える人がいます。しかしながら、生まれ持った個性の中で最大限の能力を引き出すためには、その子どものことをよく知る必要があります。特別扱いをするためではなく、最善策を考える合理的な第一歩を踏み出すためのものです。

まず相談する相手は?

現在の特別支援教育では、LDなどの学習に困難のある子どもを、「教室」のみでなく、「学校全体」で支える仕組みがつくられています。

学級担任へ相談:担任の先生に相談することで、校内委員会というものにかけられます。

その後、地域の教育委員会に設置される「専門家チーム」より適切な指導アドバイスを受ける事ができます。

専門家チームには、医師が在籍している場合が多く、医学的な検査を行うことも可能です。

専門家チーム:心理学の専門家や医師などが在籍している。 学校から相談のあった子供について、専門的、具体的、そして現場に即したアドバイスを提供する。 定期的に指導方法の効果に関してのフィードパックをするなど、支援の内容は濃いものとなっている。

最後に

ここまで紹介したものは、適切な指導を考えるためのいわば「きっかけ」となるものです。

LDを受け入れることは「我が子を普通の子に」と願う親御様にとっては大変辛い一歩です。

一方で、その一歩を踏み出すことで、たくさんの専門家による「適切な指導」が肩の荷をスッと降ろしてくれるはずです。