「子どものやる気がなくて…」
「私は毎日勉強しなさい!って言うんだけど何でこんなに危機感がないのかしら…」
子どものやる気を引き出す事に「これをやれば必ず!」はありません。
しかし、世界中で影響を与えた自己啓発の名著「人を動かす」で知られる、D・カーネギーの言葉を借りれば、それほど難しいことではないのかも知れません。
彼の提唱する「人を変える9原則」をヒントに、実際に起こりうる子供とのやりとりを想定して問題解決を図りたい。
前提としての考え方
D・カーネギーの主張ではこのような考え方が軸にある。
他者に対する自己の行動を変えることにより、他者の行動を変えることができる。
つまり私の願望、要求から一度離れて「相手の立場から見た私の働きかけが重要だ。」と述べているわけです。
以下の9原則はそれを一つ一つ行動に置き換えたものとなります。
原則1. まずは褒める
英語が苦手な中学1年生のA君。「この英単語プリントを覚えてきてね。次回テストするから。」といってそれを渡した。
次の日テストをしてみると、ほとんど覚えられていない様子だった。
「おっ、この単語は一生懸命覚えたんだね。嫌いな英語なんか見るのも嫌だろうに。君はよく考えてやる子だから、きっとどうやって覚えたらいいかよく考えていたんだね。ひとつ提案なんだけど、こういう覚え方をするともっと覚えやすくなるかも知れないよ?」
そう言うと彼は笑顔になり、すぐさまその場で英単語を覚えようと手を動かし始めた。
よくある失敗例
「本当に勉強したのか?たったこれだけのことができないんじゃ、他の勉強もできるわけがないぞ?」
当然叱られた気持ちになり、英語に対してのイメージはまた悪くなる一方です。
ポイント
よかった点のみを褒める
そもそも彼らにしてみたら、みたくもない字面で、やる気が出ないのも当然なのである。
少しでも褒めてやることで、「嫌いなものだ」というイメージを払拭してやることが先決なのです。
原則2.注意は遠回しに
数学だけは一生懸命取り組むが、英語が苦手なB君。
「B君、今回は数学の成績が上がって本当に良かったね!先生も鼻が高いよ。この調子でいけば、英語もいい点が取れそうだね!」
そういうと彼は、
「英語は数学よりも苦手だから、やり方を考えないといけないと思うんだ」
と自ら言って見せた。
よくある失敗例
「B君、今回は数学の成績が上がって本当に良かったね!先生も鼻が高いよ。しかし、英語はしっかりやらないといけないね。」
褒めるところまではよかったが、『しかし』の一言で台無しになってしまう。
ポイント
直接的な事を避け、考えるきっかけを与える。
本人もわかっている事実を言うのではなく、「向き合うきっかけを与える」ことが先決なのです。
原則3.自分の失敗エピソードを話す
C君は2年生になってから提出物の状況がよろしくないとの報告を受けた。
当然、内申にもその評価がしっかり反映されている。
「C君。これはまずいね。しかし僕もよく忘れ物をするタチでね。ほらこの前なんか、訪問する時間まちがえたでしょ?だから、C君のことをどうとか言う気になれないんだけどさ。まぁでも僕も実はこんな風に気をつけてるんだけど…」
すると生徒Cは
「先生、僕も忘れないように手帳に書いてみようかな。」
と言ったのだった。
よくある失敗例
提出物なんか出して当たり前なんだから、ちゃんとしなさいよ!
こんな風に言われては、「わかってるから言わないで」と耳を塞ぎなくなってしまいますよね。
ポイント
上から物を言わず謙虚な姿勢を見せることで気持ちよく問題解決に向かう。
ネガティブな問題に関しては、潤滑油をつけるようなイメージで自分の失敗エピソードを入れてあげることでスッと考えるきっかけになるものです。
原則4.「〜しなさい」をやめる
定期テスト1週間前になっても勉強を始めないD君。
「そろそろ勉強始めないと痛い目に合うぞ。そろそろ勉強始めなよ!」
この言葉が出そうになった私はスッとこらえて
「D君、定期テストまでのスケジュールのことなんだけど、どうもうまく作れなくて。どうやったらテストで良い結果出せるようなスケジュールになるか一緒に考えてくれないか?」
するとD君は
「先生テストまで後1週間だよ?そんな呑気なこと言ってちゃダメだよ」
と自ら大慌てで勉強計画を作り始めるのだった
よくある失敗例
「なにゲームばっかりやってるの!いい加減勉強しなさい。」
人はやらされることに関しては、集中力のレベルが非常に低いです。
やらされた勉強では思ったような効果が出ないのも当然ですね。
ポイント
命令するのではなく、気づかせるための行動をとる
直接的に生徒に勉強を促すようなことはしません。勉強させたいという事を悟られぬよう、主役である彼にきっかけを与えるように意識しましょう。
原則5.顔を潰さない
定期テストのできが散々だったE君は、テスト返しの日が憂鬱でした。
先生からチクりと一言言われるのを想像したのだろう。
「いやー今回は残念だったね。確かに今回はいつもより結果が悪かったかもしれないけど、僕は君がやればできる子だと信じているから、言うことは無いよ。なにせ君は僕が見込んでいる生徒なんだからね。」
先生に言われたこの一言で胸が熱くなったE君は「次回のテストでは必ず」と決心するのである。
よくある失敗例
この結果はよく無いね。何が悪かったのか自分でよく考えなさい。どう考えてもテスト前にゲームばかりしていたことが原因だと思うけど?
点数をとれなくて一番嫌な気もちなのは他でもなく当人。言われなくてもわかっているのです。
ポイント
特に他人がいる前では、その子のメンツを尊重する。
大切なことは、大人がどう評価するのではなく、自分自身がどう評価するかです。
自己評価を下げることは、勉強に対するハードルをあげてしまう事になりかねません。
原則6.小さな事を成功に仕上げる
国語が苦手でいつもひどい点ばかりとってくるFくん。
そこで
「いやぁFくん。きみこの前のテスト、漢字がバッチリだったじゃ無いか。次もこの調子で頑張ってね。」
次の日Fくんは、
「国語の文章題が苦手なんだ。どうやって勉強すれば点数が取れるの?」
と質問に来たのである。
よくある失敗例
国語は本当に出来が悪いね。苦手なのに言われた通りにやらないからこうなるんだよ?
苦手であるという事を、他者から言われるとさらに苦手意識が強まってしまいます。
ポイント
とにかく小さな成功でも見つけたら褒める。
このような生徒は、褒められるという報酬から遠ざかっていることが多いです。
成功と感じる場面を増やしてあげることが、さらなる成功を生み出します。
原則7.期待感をかける
高校受験を控えるGくんの夏休みのことです。
志望校は難関校と呼ばれるS高校なのですが、いっこうにエンジンがかかる様子がないとお母さんから相談があった。
そこで
「そういえば、そろそろ模試があるね。君はきっといい成績をとってくるんじゃないかって他の先生と話をしていたんだよ。あんまり頑張りすぎないようにね」
こう言うと彼は
「まぁ任せてくださいな。」とドヤ顔で教室を後にした。
よくある失敗例
お母さんから聞いたけど全然勉強してないらしいね。このままで大丈夫か?
お母さんにも言われて、先生にもこんなこと言われては、勉強をしたいという気持ちにはなりません。
ポイント
重圧を与えるのではなく、期待している事を心から伝える
期待されていると感じることで、承認欲求が満たされます。そんな嬉しい期待を裏切りたいと思う人はいません。
原則8.激励する
志望校を決める時期になったH君。
「僕はそんなに勉強できるわけじゃないし、今いけるレベルの高校でいいかな。」
彼は、内申点はそこまで高くないものの、応用力に長けた学力の持ち主だった。
「自分では気づいてないかもしれないが、きみの応用力はなかなかのものだよ。入試で力が発揮できるのは君みたいなタイプなんだ。」
そういうと彼は、一つ上のレベルの高校を志望校とし、今までよりも熱心に勉強に取り組むようになった。
よくある失敗例
なんでやる前からそんな低いレベルの高校を目指すなんていうんだ。
本人からしてみたら、勉強を一生懸命やってまで行きたい高校がないのに、そんな事を言われても響きません。
ポイント
自信を持つきっかけを作る
彼は、自分の能力をこの程度だと決めつけていましたが、先生から確かな評価を受ける事で、1歩踏み出すことができたのである。
原則9.協力を求める
塾の授業中に仲間内でコソコソと話を始めてしまうグループがいた。
その中でも特に元気な悪ガキGくんがいる。
同僚の先生は「この前、他の生徒に迷惑だろ!と怒鳴りつけてやったんだんだけど、その日だけだよ静かになったのは。。。」と吐露していた。
そこで私はGくんを呼び出し「いやぁ実はお願いしたいことがあってね。Gくんはみんなのリーダーみたいな存在だからぴったりだと思ってね。」と一枚の紙を渡した。
そこには、クラスの模範生であるべきクラス長の決まりごとが書かれていた。
「みんなをちゃんとさせればいいんだよね?」
そういってGくんは胸を張って教室に戻った。
よくある失敗例
なんで君は簡単なルールも守れないんだ?
反抗期の少年にとってこんな一言はただただ反発心を買うだけである。
ポイント
役割を与え、あなたにとっての重要感を示す
人から求められることは、誰しも嬉しいことです。何かしらにつけて役割に名前をつけてあげるだけで、重要感は増します。
まとめ
いかがでしたか?
ついガミガミ言ってしまうあなた。目的を果たすために必要な行動とは何かと考えると、参考にすべき点がいくつかあったでしょう。
この記事であなたの悩みが解消される事を願っております。