「この英単語なんだっけ…」「公式が覚えられない!」

おおくの受験生が頭をかかえる「記憶力」は「アウトプット」と大きく関係しています。

この記事では、なぜ勉強においてアウトプットが重要なのかを解説していきます。

アウトプットとは?

アウトプット=出力

アウトプットとは、脳の中に入ってきた情報を脳の中で処理し、外界に「出力」することです。勉強では、「問題集を解く」「テストを受ける」ことがアウトプットです。

インプット=入力

反対に、脳の中に情報を入れる、つまり「入力」することをインプットとよびます。勉強では、「授業で先生の話を聞く」「教科書をよむ」ことです。

なぜアウトプットが重要なの?

結論は、アウトプットすることで、はじめて「長期記憶」になるからです。では、「長期記憶」とは一体、何者なのでしょう?

長期記憶とは?(=長期的な記憶)

自分の生年月日のようにほぼ永遠に覚えていられるような記憶を「長期記憶」とよびます。(一方で、聞いたばかりの電話番号をおぼえていられ一時的な記憶を「短期記憶」とよびます。)

人間の脳は、「重要な情報」を長期記憶としてのこし、「重要ではない情報」を忘れるようにつくられています。

つまり、長期記憶にするためには「重要な情報」として脳に知らせる必要があります。

そのためには、記憶した情報が何度も「使われる」ことが必要。「使う」ことがまさしく「アウトプット」です。

記憶した情報は、「使われる」ことで「重要な情報」として脳に認識され、長期的に保存されるのです。

では、アウトプットするために、具体的に何をすればよいのだろう?

アウトプット、なにをすべき?

記憶した情報を使うことを「アウトプット」。脳に重要な情報としらせるためには「アウトプット」が重要と説明してきましたが、では、具体的になにをすればよいのでしょう。

アウトプット=「話す・書く」

例えば、つぎの英単語をおぼえる場合、

materialism = 物質主義

読んで覚えるのが「インプット」

声に出して、何度も書いて暗記するのが「アウトプット」

ただ読むよりも、声にだして、書きながら覚えたほうが記憶への定着率が高まります。

なぜ「話す・書く」が効果的なの?

それは、「話す・書く」ことは「運動神経」を使った記憶「運動性記憶」だからです。

「運動性記憶」は、一度おぼえるとその後ほとんど忘れることがありません。一度、泳げるようになれば、5年ぶりでも泳げるはずです。いわゆる「体が覚えている」感覚が運動性記憶です。

運動性記憶=体で覚える

筋肉や腱を動かすと、その運動は小脳を経て、海馬を経由し、大脳連合野に蓄積されます。小脳を経由するので、経路が複雑になり、多くの神経細胞が働くことで記憶に残りやすくなります。だから、一度覚えたら忘れにくいのです。

一方で、教科書を読んで覚えるときには、「意味記憶」を使って記憶します。しかし、意味記憶は、覚えにくく、忘れやすいという特徴があります。

2週間で3回アウトプット=長期記憶

およその目安として、記憶した情報を2週間で3回アウトプットすると「長期記憶」としてのこりやすくなります。

英単語の暗記であれば、同じ単語を2週間で3回「声に出して・書きながら」覚えると、記憶しやすいです。

「話す」よりも効果的なのが「書く」

「話す」よりも「書く」ことのほうが記憶に残りやすいです。

理由は、「書く」ことで「脳幹網様体賦活系(RAS)」が刺激されるから。

補足: 脳幹網様体賦活系=RAS

RASとは、脳幹から大脳全体に向かう神経の束。神経のネットワークのことです。

RASが刺激されると、大脳皮質全体に「注意を促す信号」が贈られます。すると、脳は、その対象物に対し集中力を高め、積極的に情報を収集しようとします。

そのRASを刺激するもっとも簡単な方法が「書く」こと。

ゆえに、「書く」ことで、脳が活性化し、記憶力が学習能力が高まるのです。

ちなみに、矢野は、高校時代、大学ノート11冊分に英単語を書きまくって覚えていました。

勉強に、どのように活用できる?

「話す・書く」などの運動性記憶をつかうことで、長期的に記憶する方法を解説してきましたが、実際に、勉強ではどのように活用できるのでしょうか?

最も効果的なアウトプット=人に教える

なにかを暗記したいとき、「だれかに教える前提」で暗記したほうが、記憶力がアップします。

なぜなら、不十分な理解では人に教えることができず、教える必要にせまられると「しっかり理解しよう」とするからです。

さらに、教えることで「自分の理解度や不十分な点」が明確に見えてきます。

補足:学習定着率「ラーニング・ピラミッド」

「教える」ことが、もっとも効果的といえる研究があります。

それが「ラーニング・ピラミッド」です。

アメリカ国立訓練研究所の研究で、人が何かを学ぶ場合、どれだけ記憶に残りやすいのか、どれだけ定着するのかを方法別に調べたところ、効果が低いほうから順に「講義を受ける、人の話を聞く」→「読む」→「視聴覚教材を使う」→「実験機材を使う」→「グループ討論」→「体験型学習」→「他人に教える」という結果になりました。

つまり、「ひとに教えること」が一番まなびの効果が高いのです。

「暗記」:「問題集」=3:7が黄金比

記憶への定着をはかるためには「アウトプット」がより必要。できるだけたくさんの「問題を解く」ことで、長期記憶にのこります。

ただ教科書を暗記するだけでは、記憶には残りません。

「問題を解く=知識を使う」ことで、脳は記憶に残そうとするのです。

まとめ

暗記したいことを記憶するためには「アウトプット」が必要不可欠。この記事では、その理由と具体的な方法を解説してきました。

勉強においては、インプットよりもアウトプット(問題を解く)ことのほうが重要です。

もし、あれだけ教科書を読んだのに、テストで結果が出なかったと嘆いているのならば、アウトプットが足りていません。

間違えてもいいので、どんどん問題をといて、記憶力を高めていきましょう。

(参考)
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変える アウトプット大全』,サンクチュアリ出版
茂木健一郎(2007),『脳を活かす勉強法』,PHP研究所