わが子の不登校は親にとって大きな心配ごとです。
「学校に行けない」「勉強が遅れる」「将来が心配」……
そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。
しかし今、従来の学校とは異なるアプローチで子どもたちの学びをサポートする「不登校特例校」が注目されています。
この記事では、不登校特例校の特徴や魅力、お子さまの可能性を引き出す取り組みについてご紹介します。お子さまに合った学びの場を見つけるための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
不登校特例校とは

不登校特例校は、不登校の児童生徒に対して、その実態に配慮した特別な教育課程を編成することができる学校として文部科学大臣が指定した学校です。文部科学省のパンフレットには、もうちょっとわかりやすい説明があります。
学校に行きづらい児童生徒のために、通常の学校より授業時間数が少ないなど、柔軟に学ぶことができる学校(小・中・高等学校等)のことです。
引用:COCOLOプラン/文部科学省

ちなみに文部科学省は不登校特例校の呼び名について、令和5年に『学びの多様化学校』としていますね。
この制度が生まれた背景には、日本における不登校児童生徒の増加があります。

文部科学省の調査によると、2022年度の不登校児童生徒数は約29万人で、10年前と比較して約3倍に増加しています。「学校になじめないな」という子どもは、決して特別ではないのです。
不登校特例校と一般的な学校との違い
不登校特例校と一般の学校には、いくつかの重要な違いがあります。
・カリキュラムの柔軟性
学習指導要領に縛られない独自のカリキュラムを編成できる
・出席日数
年間授業日数の基準(標準200日)に縛られない
・授業時間
一般的な1単位時間(45分または50分)にとらわれない授業設計が可能
・学習内容
児童生徒の状況や興味関心に合わせた学習内容の提供
不登校のお子さまでも無理なく学校生活を送ることができる環境が整えられていますね。では、具体的にどのような特徴があるのでしょうか?不登校特例校の魅力について詳しく見ていきましょう。
不登校の子どもに寄り添う「特例校」の特徴と魅力

特例校は少人数制クラスと手厚いサポート体制
不登校特例校の大きな特徴のひとつが、少人数制のクラス編成です。多くの特例校では、1クラス10名前後という少人数でクラスを構成していますし、一部の時間帯で個別指導を行っている学校もあります。
「大人数の教室が苦手」「先生に質問しづらい」といった悩みを抱えるお子さまにとって、少人数制は大きな安心感につながります。また、スクールカウンセラーや支援員なども配置され、学習面だけでなく心理面でのサポートも充実しています。
柔軟な授業時間と独自のカリキュラム
不登校特例校では、子どもたちの状況に合わせて柔軟な時間割を組むことができます。一般的な学校のように「朝8時半から午後3時半まで」という固定された時間ではなく、短時間から始めて少しずつ延ばしていくなど、お子さまのペースに合わせた登校が可能です。
また、独自のカリキュラムを編成できることも大きな特徴です。たとえば、午前中は基礎的な学習(国語・算数・英語など)に集中し、午後は創作活動や体験学習を行うなどの工夫がされています。休憩タイムがあったり、自由に取り組める時間があったりするのも、特例校の特徴です。
「勉強についていけるか心配」「学校の授業時間が長すぎて疲れてしまう」といった不安を抱える子どもたちにとって、柔軟な対応は大きな助けになるのではないでしょうか。
個別指導やオンライン学習も!さまざまな授業形態で学べる
不登校特例校では、一斉授業だけでなく、いろいろな授業形態を取り入れています。
・個別指導
一人ひとりの理解度に合わせた指導
・グループ学習
少人数でのディスカッションや協働学習
・オンライン学習
自宅からでも参加できる授業
・プロジェクト型学習
テーマに沿って自ら調べ、発表する学習
特に注目されているのがICTを活用したオンライン学習です。体調が優れない日や外出が難しい日でも、自宅からオンラインで授業に参加できるシステムを導入している学校が増えています。結果として「教室に行けない」という物理的なハードルが下がり、学習の継続性が保たれます。
具体的にどのような学びが行われているのか、子どもたちの可能性を引き出す取り組みについても解説しますね。
不登校・特例校での学び「子どもの可能性を引き出す取り組み」

体験型学習(自然体験、芸術活動、職業体験など)
不登校特例校では、教科書の学習だけではなく、さまざまな体験を通じた学びを重視しています。実際に体験することで得られる気づきや感動は、子どもたちの学ぶ意欲を高め、生きる力を育みます。
・自然体験
農業体験、キャンプ、自然観察など
・芸術活動
音楽、美術、演劇、陶芸など
・職業体験
職場での体験学習
・社会体験
地域イベントへの参加、ボランティア活動など
こうした活動を通じて、お子さまは「学ぶことの楽しさ」を再発見し、自分の得意なことや好きなことを見つけていくことができます。また、学校の外に出ていろいろな人と関わることで、コミュニケーション能力も自然と身についていきます。

農業体験を通じて「自分が育てた野菜が人の役に立つことがうれしい」と感じ、将来の進路を考えるきっかけになった子もいるそうですよ!
体験を通じた「できた」「楽しかった」という成功体験は、お子さまの自己肯定感を高める大きな要素となります。
ソーシャルスキルトレーニングの実施
不登校のお子さまの中には、対人関係に不安を抱えている場合もあります。不登校特例校では、このような子どもたちのために、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を取り入れている学校も多くあります。
SSTでは、以下のようなスキルを段階的に身につけていきます。
- 基本的なコミュニケーションスキル(挨拶、会話の始め方など)
- 感情のコントロール方法
- 問題解決スキル
- 協力して活動するスキル
これらのスキルは、ロールプレイやグループワークなど、実践的な活動を通じて学んでいきます。最初は緊張するお子さまも、少人数の安心できる環境の中で少しずつ自信をつけていけます。
「最初は挨拶もできなかった息子が、今では自分から友達に話しかけられるようになりました」という保護者の声もあります。対人関係のスキルを身につけることは、学校生活だけでなく、将来の社会生活においても大きな財産となるでしょう。
習熟度に合わせた学習プログラム
不登校特例校では、お子さま一人ひとりの学習の進み具合に合わせた個別の学習プログラムを作成しています。「つまずいている部分」や「得意な分野」は子どもによって異なるため、一斉授業だけでは対応しきれない部分を個別指導でカバーしています。
たとえば、以下のような取り組みが行われています。
- 個別の学習計画の作成
- つまずきやすい単元の徹底サポート
- 得意分野をさらに伸ばす発展学習
- ICTを活用した自己ペース学習
特に注目されているのが、タブレットやパソコンを活用した学習支援システムです。子どもたちは自分のペースで問題に取り組み、理解度に応じて次の課題が提示されます。「みんなと同じペースで進まなければならない」というプレッシャーから解放され、自分のペースで着実に学習を進めることができるのがいいですね。
不登校特例校での学びについてご理解いただけたでしょうか。こうした学びの先には、子どもたちの将来があります。保護者にとっても、わが子の進路や将来はとても大切なこと。不登校特例校における進路支援について見ていきましょう。
不登校後の進路が心配…特例校の進路支援と将来設計

一人ひとりに合わせた進路指導
「不登校になると将来の選択肢が狭まるのではないか」多くの保護者の方がこのような不安を抱えています。しかし、不登校特例校では、一人ひとりの特性や希望に合わせた丁寧な進路指導が行われています。
不登校特例校における進路指導の特徴
- 早い段階からの進路ガイダンス
- 個別の進路相談
- 生徒の特性や興味に合わせた進路提案
- 保護者を含めた三者面談
従来の「成績による振り分け」ではなく、「何に興味があるか」「どんな環境が合っているか」を重視した進路指導が行われています。また不登校の状態からの進路に詳しい先生に相談できるので、安心です。
高校や専門学校との連携
不登校特例校の多くは、高校や専門学校と連携しています。特に、通信制高校や定時制高校、サポート校などとの連携が強く、スムーズな進学をサポートしています。
- 高校の体験入学や学校見学の実施
- 高校の教員による出前授業
- 入試対策講座の開催
- 進学先の卒業生との交流会
また、不登校特例校の卒業生を積極的に受け入れている高校も増えています。「不登校経験者枠」を設けている高校もあり、従来よりも進学の選択肢が広がっています。
「うちの子は不登校だから高校に行けないのでは」と心配する必要はありません。お子さまの状況に合った進学先はきっと見つかります。
卒業後のサポート体制
進学先での不安や悩みに対応するアフターフォローが充実しているのも、不登校特例校の特徴です。
卒業後のサポート例
- 定期的な近況確認
- 卒業生向けの相談窓口の設置
- 卒業生会や同窓会の開催
- メンター制度(先輩が後輩をサポート)
卒業後のサポート体制があることで、「高校に進学しても大丈夫だろうか」という不安が軽減されます。また、卒業生の体験談を聞く機会があることで、在校生も将来への希望を持つことができるのです。
ここで気になるのが、実際の特例校がどんな感じなのか、どんなカリキュラムや特徴があるのか、です。いくつかピックアップしてご紹介します。
不登校特例校「こんな小学校・中学校」があります!
不登校特例校は全国各地にありますが、ここでは特徴的な3校をご紹介します。
不登校特例校「東京シューレ江戸川小学校(東京都江戸川区)」
東京シューレ江戸川小学校(東京都江戸川区)は、 日本初の不登校特例校として認定された私立小学校です。

「子どもの権利」を尊重し、子どもたちが主体的に学校運営に参加する民主的な学校として知られています。「いろいろタイム」では、子どもたちで考えながら自然体験やイベントなどを行っているそう。自由な校風と子どもの意思を尊重した教育が特徴で、毎日の「ミーティング」では子どもたち自身が話し合って学校生活のルールを決めています。
不登校特例校「岐阜市立草潤中学校(岐阜県岐阜市)」
岐阜市立草潤中学校は、ウォームアップ・クールダウンの時間があり、授業になじみやすい環境です。また授業はオンライン配信をしているので、自宅でも学校内の別室でも受けられます。

地域の方々の協力も得て、さまざまな行事やイベントも行っている活気ある学校です。
不登校特例校「世田谷区立世田谷中学校ねいろ(東京都世田谷区)」
世田谷区立世田谷中学校ねいろ(東京都世田谷区)は、世田谷区教育委員会が運営する公立の「分教室型(小中学校を母体とする本校をもち、一部の学級を多様化学校として指定)」特例校です。

SSTを通じたコミュニケーション能力の育成や、探究学習に力を入れています。
他にも多くの不登校特例校が全国にありますので、お住まいの地域や通学のしやすさなども考慮して探してみてください。文部科学省のホームページでは、認定された不登校特例校の一覧が公開されています。
学校見学や体験入学の重要性
不登校特例校を選ぶ際に最も大切なのが、実際に学校を見学したり体験入学をしたりすることです。パンフレットやウェブサイトの情報だけでは分からない、学校の「雰囲気」や「先生の対応」を直接確かめることができます。
見学や体験入学で確認したいポイント
- 教室の雰囲気や設備
- 先生と生徒の関わり方
- 実際の授業の様子
- 生徒同士の関係性
- 質問への対応の仕方
多くの不登校特例校では、定期的に見学会や体験入学の機会を設けています。お子さまと一緒に参加することで、「この学校なら通えそう」という感覚をつかむことができるでしょう。
不登校特例校の入学条件と手続きの流れ
不登校特例校への入学には、一般的な学校とは異なる条件や手続きがあります。学校によって異なりますが、主な流れは以下の通りです。
- 資料請求・情報収集
- 学校見学・説明会への参加
- 体験入学(1日~数週間)
- 入学相談・面接
- 入学手続き
入学条件としては、「不登校経験がある」または「現在不登校状態にある」ことが基本となりますが、学校によっては「登校渋り」の状態でも受け入れている場合もあります。また、多くの学校では本人の「通いたい」という意思を重視しています。
現在の在籍校から教育委員会を通す申請方式もあるので、まずは相談してみましょう。
費用面では、公立か私立かによって大きく異なります。私立の場合は入学金や授業料がかかりますが、就学支援金制度や各種助成金を利用できる場合もあります。経済的な負担が心配な場合は、学校に相談してみることをおすすめします。
ここまで不登校特例校について様々な角度からご紹介してきました。最後に、これからのお子さまの学びについて考えてみましょう。
まとめ
不登校特例校は、従来の学校では合わなかったお子さまに新たな学びの場を提供します。少人数制の安心できる環境、柔軟なカリキュラム、一人ひとりに合わせた支援—これらは全て、お子さまが自分らしく成長するための大切な要素です。

不登校という経験はマイナスに捉えてしまいがちですが、視点を買えると『自分に合った学び方』を見つけるきっかけになるかもしれません。
大切なのは、お子さまの気持ちに寄り添い、共に前に進んでいくことです。
今すぐに不登校特例校への転校が難しい場合でも、少しずつ学びに向かう一歩を踏み出すことはできます。オンライン家庭教師のサービスも充実しており、自宅にいながら学習を進めることができます。オンライン家庭教師は、教科学習のサポートだけでなく、お子さまにとって社会との新たな接点となり、コミュニケーション能力を高める機会にもなります。
「うちの子には何が合っているのだろう」と悩まれている保護者の方、まずは小さな一歩から始めてみませんか?お子さまの「学びたい」という気持ちが芽生えたとき、それを育てていく環境はきっと見つかります。
お子さまの可能性は無限大です。不登校という道を通って、お子さま自身の「学ぶ意味」を見つけ出していけることを願っています。
参考:
学びの多様化学校について/文部科学省
COCOLOプラン/文部科学省
学びの多様化学校解説資料/文部科学省
学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧/文部科学省
編集:オンライン家庭教師GIPS
オンライン家庭教師GIPS
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