最近の中学受験では、公立中高一貫校だけでなく、私立中学でも記述式の問題が多くなり、作文課題を取り入れている学校も増えています。公立中高一貫校の適性検査において、作文は頻出する問題です。公立中高一貫校との併願を見据え、「適性検査」と共通性をもたせた学力試験を行う私立中学では、作文課題や長文の記述問題がよく出題されます。
思考力や総合力を問う学校が増加傾向にあるため、作文も避けては通れない受験対策のひとつになりつつあります。もし志望する学校で作文問題が出題されるようであれば、あるいは作文に近い長文の記述問題が出るようであれば、対策が必要です。
今回は「中学受験の作文問題」を取り上げ、わかりやすく解説します。
中学受験の作文とは
中学受験の作文は、子どもの考え方や表現力、思考力を測るために行われます。
受験校によってテーマは異なるものの、「将来の夢」や「自分の好きな本」など、身近な話題が選ばれることが多かったのですが、最近は少し傾向が変化しています。今も基本的には小学生に親しみやすいテーマが取り上げられていますが、小論文を書かせるなど難易度の高い出題も見受けられます。
また、作文を通じて、自分の意見を明確に伝える力や、具体的な例を使って説明する力が問われます。文章の構成や「てにをは」の使い方も評価のポイントになります。
中学受験で「作文」が注目されている理由
昨今では「作文のための教室」もあるくらい、作文は入試対策のひとつとして注目されています。それは年々、入試において長い記述式問題が増えているからです。説明や資料を読んで本文を抜粋したり要約したりするのではなく、問いに対して、自分の意見や考察を200〜300文字程度で記述するような問題です。
自分の意見をまとめて、わかりやすく伝える文章力が、今後はさらに中学受験では必須となってくるでしょう。
中学受験で作文の採点が合否にどれだけ影響するのか
入試で作文の課題が出た場合、作文の出来=点数によって合否が分かれるのでしょうか?
作文にどれくらい比重をおいているかは学校によって違います。
また採点方法も、ひとまず「きちんと文字数を埋められて、極端に変な書き方をしていない」のであればマイナスにならない学校もあれば、厳しい採点基準で誤字脱字から文法までチェックする学校もあります。作文の国語的な要素よりも、テーマに対する考察、自分の意見がきちんと書かれているか、その意見に根拠があるかなどを重視する学校もあります。
私立校の場合は、志望校の作文における配点と採点基準を調べておきましょう。塾や家庭教師の先生に相談し、作文の対策にどれくらい力を入れるべきか、家庭学習プランを一緒に立ててもらうのもおすすめです。
公立中高一貫校では、作文系の割合が高いので対策は必須です。公立中高一貫校向けのコースやカリキュラム、また問題集では作文や記述問題をかならずといっていいほど行います。
中学受験の作文「文字数」について
作文の問題では、文字数が指定され、マスに1文字ずつ記入していくパターンがほとんどです。文字数は短いと200〜300字、400から500字程度が多いようですが、中には600字というのもあります。
指定された文字数の9割、マス目の空白が見てわかるほど多くならないように、ちょうどよく文章をまとめる力が必要になります。
中学受験の作文対策ポイント4つ
①基本的な文章の書き方を学ぶ
②とにかく書いて慣れる
③書きっぱなしにせずに添削してもらう
④論理的な文章を書けるようにする
①基本的な文章の書き方を学ぶ
文章を書くには、決まったルールがあります。たとえば句読点の打ち方や、括弧の使い方、基本的には「です・ます」と「である・だ」のような語尾を混在させないといったことです。
作文の書き方は小学校低学年から学んでいますが、しっかりとおさらいをしておきましょう。作文練習のドリルや問題集を購入し、地道に続けることで作文の基本ルールを押さえることができます。
②とにかく書いて慣れる
とにかく書いて練習するのが、作文に慣れる近道です。
問題集だけでなく、簡単なテーマで原稿用紙1枚分の作文を書く、ニュースを題材にして、自分なりの意見をまとめて500字にまとめる、といった練習もおすすめです。
最初は書き始めるまでに考え込んでしまったり、字数が合わずにやり直したりと時間もかかります。たくさん書いて、作文の書き方のコツがつかめてくると、一気にスピードも上がってきます。
まずは書くことに慣れるように繰り返し練習しましょう。
③書きっぱなしにせずに添削してもらう
書いた作文は放置せずに、添削するようにしましょう。
塾や家庭教師の先生なら、受験向けにポイントを押さえたアドバイスをくれるでしょう。中学受験の入試問題は、「2つの段落にわける」「◯◯の立場になって考える」といった条件で書くこともよくあります。きちんと条件にそっているか、必要な内容が含まれているか、この辺りはプロの指導が必要かもしれません。
しかし、第三者である家族が見るだけでも、主語述語の使い方や何を言いたいのかわからないといったことは指摘できます。
ただたくさん書くだけでなく、書いて、間違いを直してもらう、わかりづらいところを指摘してもらうことで、どんどん書く能力が向上します。
④論理的な説明を書けるようにする
最近は特に多くの学校が、論理的思考力を重視しています。中学受験の作文では「楽しかった夏休みの思い出を書く」といったテーマより、「学校行事で必要がないと思ったものをあげ、なぜ必要ないと思ったのか具体的に380字〜420字内で書きなさい」といった問題が多く取り上げられています。
「朝起きてご飯を食べました。そして車に乗りました。それからショッピングセンターに行きました」というような作文は求められていません。自分の意見をわかりやすく伝えることが重視される傾向があるため、論理的な文章を書けるようにすることがポイントになります。
作文対策としてPREP法を学んでおいて損はない!
論理的な文章とは、主張や主題が明確で、それらを支える理由や根拠が明示されており、話の筋が通っている文章です。と、言われても、どのように書いたらいいのかわかりづらいですね。
論理的な文章を書く方法として、PREP法があります。PREP法をベースに文章を書くと、すっきりとわかりやすくなります。
P(Point) 結論
R(Reason) 理由・根拠・解説
E(Example) 具体例・体験などで理由を補足
P(Point) 結論
とてもシンプルな例を出すと、以下のようになります。
P 「私は犬が好きです」
R 「犬はかわいいし、賢くて、人間によくなつくからです」
E 「うちで飼っている柴犬のコロは、わたしが帰宅すると喜んで飛びついてきます。私が落ち込んでいるとそばに寄ってきて、クンクンと鳴きます」
P 「だから、わたしは犬が大好きです」
PREP法は小論文の書き方としても有名です。わざわざ難しく「PREP法を勉強しましょう」と構えなくても大丈夫!同じことの繰り返しになりますが、やさしく言い直すと次のようになります。
1:結論・自分の考え・主張を最初に書く
2:なぜそう思うのかを書く
3:自分の体験やこんなことがあると具体的な例も書く
4:最後にふたたび最初に書いた結論を書いて終わる
よく小学校では「はじめ・なか・おわり」と3つのパートに分けて文章を書く方法を指導します。そこからステップアップして、PREP法へと進んでいくのもいいかもしれません。
どんな場面でも有効なわけではありませんが、PREP法はビジネスでも活用されるスキルです。覚えておいて損はありません!
中学受験の作文で「自分の意見を書く」ために必要なこと
再三繰り返してしているように、中学受験の作文では自分の考えをまとめて書く問題が多く出されます。
小学生にとって「自分の意見」をまとめるのは、なかなか難しいものです。もっとも、自然と自分の意見を主張していることはよくあります。
ゲームがほしいんだよね
なんでゲームがほしいのよ
オンラインでみんなとやるからだよ。僕だけ持っていないと仲間に入れてもらえないし、学校にいっても話題に入れないんだよ
ゲームがないからって友だちと遊べないわけではないでしょ?
ん〜、でもみんなそのゲームをやっているんだよ
同じゲームをやらない子は仲間じゃないの?
そういうことじゃないけど
ゲームがほしい!という話題から、『オンラインで同じゲームをやってつながらないと「友だち」として認められないのか?』をテーマにした議論に自然となっているわけです。
この類のテーマも実は中学受験の作文で比較的多く見受けられます。
子どもが何かを主張したり、自分の考えを話し出したりしたら、最後まで聞いてあげましょう。納得がいかないことは、さらなる説明や説得できるだけの理由をのべるように問いかけてあげてください。
もっとも、こんな会話では途中でついつい「はぁ、ゲーム?何を言っているいの、ダメダメ!」と却下しがちですが、却下するにしても、きちんと「なぜ却下するのか」親の意見をのべ、意見を支える根拠を伝えることが大事です。
日常生活で、子どもはよく無意識に自分の意見を親に伝えようとしています。そのタイミングを逃さずに、聞き流さずに、「なるほど、で、その理由は?」「うーん、なんか納得がいかないなあ、ママがそれならいいよ!と答えられるように説明してみて」と、促してみてあげてください。
相手に自分の気持や意見を理解してもらうのは、生き抜く力としても必要です。作文と中学受験のテーマからは少し外れているようですが、このような体験の積み重ねが「意見を書く」基礎の部分になるのではないでしょうか。
自分の考え・思いを言語化する力は大切!
大学受験でも、大学に入ってからも、社会人になってからも、文章を書く機会は常にあります。わかりやすく、読みやすい文章、根拠があり説得力のある文章を書けるようになると、たとえば卒論でも、あるいは就職活動でも大いに役立つでしょう。
作文の力、つまり自分の考えや思いを言語化する力はとても大切です。中学受験対策としても重要ですが、子どもの将来のために小学生のうちから少しずつ身につけておきたい力だと思います。
編集:オンライン家庭教師GIPS
オンライン家庭教師GIPS
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