高校生活のさまざまな記録が詰まった調査書。大学受験では欠かせない重要な書類ですが、具体的にどんな内容が書かれているのか、合否にどの程度影響するのか、気になる点は多いですね。
この記事では、受験生とご家族の皆さまに向けて、調査書について知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
大学受験の調査書とは?大学側は何を知りたいの?
調査書は、高校での学習成績や活動内容を記録した公式文書です。総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜のすべての出願時に提出が必要となります。
大学側は、この調査書から受験生の学力だけでなく、人物像や高校生活の様子を読み取ろうとしています。
大学が調査書から主に確認したいこと
- 高校卒業の見込み
- 学習成績の推移
- 課外活動等の取り組み
学習成績の推移について、大学は高1から高3の1学期までの成績推移を分析し、学力の伸びや学習への取り組み姿勢を確認します。また、部活動やボランティアなどの課外活動は、志願者の意欲や適性を示す指標となります。こうした要素を総合的に判断し、受験生の人物評価の参考とします。
つまり、テストの点数だけでは見えない、皆さんの人となりや成長の過程を知るための大切な資料なのです。
調査書は大学受験で合否にどのように影響するの?
学校推薦型・総合型選抜と一般選抜では、調査書の重要度が大きく異なります。
学校推薦型・総合型選抜の場合
- 調査書の内容が合否を左右することがある
- 評定平均値が出願条件として設定されていることが多い
- 部活動やボランティア活動など、学習以外の活動も重視される
推薦入試では、調査書は重要な書類のひとつです。特に、学校推薦型選抜では、調査書の内容が合否に影響すると考えてよいでしょう。
なお、いわゆる推薦では、調査書とは別に志望理由書と活動報告書の提出を求められるのが一般的です。活動報告書は、高校生活で頑張ってきたこと、表彰されたり全国大会に出場したり、あるいは部活動やボランティア活動について、自分自身で記入します。
一般選抜の場合
- 主に学力試験の得点が重視される
- 調査書は補完的な資料として使用されることが多い
- 同点の場合の判定材料として使用されることもある
一般選抜では、調査書の影響力は限定的です。
学部別入試、全学部統一入試および大学入学共通テスト利用入試では、調査書は合否に直接関係ありません。また、Web出願時に高等学校入学に相当する年齢から出願時までに、「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」をもって活動・経験してきたと受験生本人が考えている内容について、500文字以内で入力していただきます。入力データは得点化せず、入学後の指導上の参考資料として利用します(入試時の合否判定には使用しません)。
出典:明治大学入試総合サイト
上記は令和7年1月時点での明治大学の情報ですが、私立大学では「一般選抜では調査書が合否に影響は与えない」と明記しているところは少なくありません。
とはいえ、一般選抜を受ける場合でも、調査書の内容を軽視すべきではありません。同点の受験生が複数いた場合など、最終的な判断材料として参考にされることもあります。
大学受験の調査書「点数化」「得点化」について
調査書の点数化とは、高校での学習成績や活動実績を数値化して入学者選抜に活用する方式です。私立大学の一般選抜では調査書の重要度は比較的低く、点数化しているところはほとんどないと思われますが、一方で国公立大学の一部では以下のようなケースがあります。
- 点数化して合否判定の一要素とする
- ボーダーライン層の判定材料として使用
- 面接などと組み合わせた総合評価の一部として活用
ただし、調査書を点数化する場合でも、一般選抜においては、共通テストや個別学力検査の成績が最も重視されます。調査書が合否に大きく影響するのは、主に総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜などの場合です。
各大学の入試要項で、調査書の具体的な活用方法や配点を確認することが重要です。
大学受験の調査書に記載される内容を詳しく解説
調査書には、高校生活のあらゆる側面が記録されています。主な記載内容は以下の通りです。
1. 基本情報
- 氏名、生年月日、現住所
- 在学中の高校名など
2. 学習の記録
- 各教科・科目の5段階評価
- 修得単位数
- 学習成績の状況(評定平均値)
- 学習成績概評(A~Eの5段階評価)
学習成績の状況は、高校3年間の各教科の成績がまとめて記載され、評定平均値も記入されます。
学習成績概評は、高校3年間の成績をAからEの5段階で評価します。
3. 総合的な探求の時間の記録
学習活動内容を3観点で、評価も記載されます。
4. 特別活動(生徒会活動、学校行事など)の記録
部活動、生徒会やホームルーム活動、学校行事などについての記録です。
5. 指導上参考となる諸事情
部活動の成績や、資格や検定、表彰、留学経験など、4に記載できない特記事項が記入されます。
6. その他
出欠の記録など
調査書では成績はもとより、日頃の活動なども記載されるので、部活や学校行事、探求学習のような場面でもしっかり自分の責任や役割を果たして、主体性がある、コミュニケーション能力が高いといった評価を得られるようにすることが大事です。
ちなみに「第4学年」まであるのは、たとえば留年した場合、また定時制や4年制のある高校があるためです。
※調査書の仕様や決まりは常に変わる可能性があります。最新の情報をご確認ください。
大学受験の調査書|先生に頼む時の注意ポイント
調査書は高校の先生に発行を依頼する必要があります。気をつけたいポイントは大きく2つあります。
1. 早めの依頼が重要
- 通常2週間程度の作成期間が必要
- 繁忙期はさらに時間がかかることも
- 高校によって申請期限が設定されている場合がある
2. 必要書類の確認
- 「調査書発行願」など、学校指定の書類を忘れずに
- ガイダンスでの説明をしっかりメモしておく
複数の大学に出願する場合、必要な調査書の部数を事前に確認しましょう。通常、1通につき数百円の手数料がかかります。
また、一度発行された調査書の内容修正は原則できません。志望校や学部・学科の記入が必要な場合は、特に慎重に確認してください。
大学受験の調査書|活動実績でプラスになるレベル
部活動での実績例
- 県大会優勝
- 部活動のキャプテンを務めた経験
- 全国大会出場
資格取得の例
- 英検準1級や2級
- TOEIC高得点
- 漢字検定2級
- 数学検定2級
- 日商簿記検定2級
資格や検定に関しては、一般的に「2級以上」が記載の目安とされているようですね。推薦で活動報告書や資格記入では、たとえば3級であっても自分の判断で記入することは可能です。
ただ、調査書と志願者本人が書く活動報告書などの書類の内容が、あまりに食い違う、かけ離れていたら不自然です。高校のガイダンスでの説明を参考にし、少しでも不安や不明点があれば個別に先生に相談しましょう。
表彰歴の例
- 学校長表彰(皆勤賞や学業優秀賞など)
- 地域のボランティア活動での表彰
- 科学コンクールやプログラミングコンテストでの入賞
- 芸術や音楽系で全国レベルでの入賞
特別活動の記録例
- 生徒会長や学級委員長の経験
- 文化祭実行委員長など委員長としての経験
総合的な学習の評価
- 環境保護に関する長期的な調査活動
- 地域の歴史研究プロジェクトでのリーダー経験
ボランティア活動
- 地域の清掃活動への定期的な参加
- 高齢者施設でのボランティア活動
上記はあくまで一例ですが、こうした活動や実績は、学業成績以外の面での受験生の能力や人間性をアピールできます。特に総合型選抜や学校型選抜では、大きく評価される可能性があります。表彰については、県知事賞や全国大会レベルで何らかの功績や成果を得ているとプラスポイントになりやすいです。
何か記載できるような特別なことはない……という人も多いかもしれません。
『なにも秀でたものがないなぁ』なんて落ち込む必要はないですよ!
文部科学省は、調査書の「特別活動の記録」や「指導上参考となる諸事情」の記載が少ないからといって、志願者を不利益に取り扱わないようにとしています。
要するに調査書によってマイナス評価がされるのではなく、「プラス」評価を得られるということです。
部活動で大々的な活躍をしていなくても、頑張って努力してきたことを評価されることもあるし、コツコツ勉強してきた姿勢が良いと判断することもあるみたいですよ〜。
大学受験の調査書| 2025年度入試から探求学習がより重視される傾向に
2025年度入試から調査書の書式が変更されます。
主な変更点
1. 「5.総合的な探究の時間の記録」「6.特別活動の記録」「7.指導上参考となる諸事項」の3項目の様式が変更されます。
2. 新学習指導要領に基づき、「知識・技能」「思考・表現・判断」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点を重視する評価が記載されるようになります。
3. 「6.特別活動の記録」が簡素化され、「学校行事」「生徒活動」「ホームルーム」の3項目に分類され、活動内容に問題がなければ各項目に丸をつける形式になります。
4. 「7.指導上参考となる諸事項」も簡素化され、学年ごとに箇条書きする形式になります。
これらの変更は、探究学習をより重視する傾向を反映していますが、同時に教員の負担軽減も目的としています。
今後も入試制度の変更に伴い、調査書の形式や重要度が変わる可能性があるため、最新情報のチェックを忘れずに!
まとめ|調査書は高校生活の集大成
調査書は、みなさんの3年間の頑張りを大学に伝える大切な書類です。入試形態によって重要度は異なりますが、いずれにせよ高校生活を真摯に送ることが、よい調査書につながります。早めの準備と、最新の入試情報の確認を心がけて、自信を持って受験にのぞみましょう。
参考:
令和7年度大学入学者選抜実施要項について/文部科学省
令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告/文部科学省
編集:オンライン家庭教師GIPS
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