公立中高一貫校の入学者選抜は、国立・私立中学校が行う学力試験とは大きく異なります。公立中高一貫校で実施されるのは、試験ではなく「適性検査」です。
今回は公立中高一貫校の適性検査について、わかりやすく解説します。
公立中高一貫校の適性検査とは
公立中高一貫校では、いわゆる2教科・4教科の入学試験は行われません。公立中高一貫校では、将来のリーダーを育成する6年間の一貫教育に適しているかどうかを見極める、「適性検査」が行われます。
なお、選抜においては次の3つが基本となります。
- 適性検査
- 報告書
- 作文
また、一部の公立中高一貫校では、面接を行うところもあります。今回のコラムでは、適性検査を取り上げます。
なぜ学力試験ではなく適性検査なのか
では、なぜ公立中高一貫校では一般的な入学試験ではなく「適性検査」なのでしょうか?
公立中高一貫校については、学校教育法施行規則で「入学者選抜に当たって学力検査を行わないものとする」と決められているからです。
文部科学省では、中高一貫教育校が受験準備に偏した教育を行う,いわゆる「受験エリート校」になったり,受験競争の低年齢化が生じたりするようなことは,教育改革に逆行するものであり、あってはならないこと(引用:中高一貫教育Q&A/文部科学省)、と明記しています。
とはいえ、入学希望者全員が進学はできませんから、一貫教育の適性があるかを検査する「適性検査」を行うわけです。そのため、受験ではなく「受検」と表記します。
現実的には、受験をする側からすれば、やはり「入学試験」であることには変わりありません。ただし、難関私立中学のような学校で学んでいない非常に発展的な問題が出されることはありません。あくまで「小学校で学んだこと」が適性検査の出題範囲となります。
しかし、だからといって適性検査は「小学校でちゃんと勉強していれば誰でも受かるよ」というわけでもないのが難しいところです。では、解説を進めていきましょう!
公立中高一貫校「適性検査Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の違い
適性検査は3つの種類があります。
- 適性検査Ⅰ
- 適性検査Ⅱ
- 適性検査Ⅲ
すべての学校でⅠからⅢまで出題されるのではなく、学校によってⅠとⅡだけというパターンもあります。
適性検査Ⅰ | 国語・作文 ●読解問題 物語文や説明文を読み、記述で回答が一般的 ●作文系問題 テーマに合わせ自分の意見や感想を書く |
適性検査Ⅱ | 大問1 算数系 大問2 社会系 大問3 理科系 ●計算問題 基本的な計算問題、高学年で学ぶ応用的な問題も含む ●図形問題 図形の面積や角度を求める、立体の展開図など ●論理系の問題 論理的思考を問う |
適性検査Ⅲ | 学校ごとに異なる独自問題・理系(算数・理科) ●教科横断系問題 理科社会の知識をベースに考察する出題が多い ●課題解決型問題 資料から問題を見出し、解決策を記述 |
適性検査Ⅰ:国語・作文
・読解問題:物語文や説明文を読み、問いに対して記述形式で回答するパターンが多い
・作文系の問題:テーマにあわせ自分の意見や感想をのべる
適性検査Ⅱ:大問1…算数系/大問2…社会系/大問3…理科系/教科横断・複合的な問題が多い
・計算問題:小学校で学ぶ基本的な計算問題、高学年で学ぶ応用的な問題も含む
・図形問題:図形の面積や角度を求める、立体の展開図など
・論理系の問題:数列や規則性などを見つけ回答を導き出す、論理的思考を問う
適性検査Ⅲ:学校ごとに異なる独自の問題 理系(算数・理科)
・教科横断系の問題:理科や社会で学んだ知識をベースにした問い。資料が提示され、その内容について考察する問題も多い
・課題解決型問題:あるテーマの資料や解説を読み解き、問題や課題を見つけて、さらにその問題の解決策を考える。思考力、表現力を含んだ総合的な観点から評価される
公立中高一貫校の適性問題「長文読解と記述力」が必須
公立中高一貫校「適性問題」の特徴のひとつに、問題文が非常に長いことがあげられます。特に長文読解の問題ですが、長文というくらいだから長くて当然……なのですが。ここで令和5年度の適性検査例を見てみましょう。
引用:都立白鸚高等学校・附属中学校公式サイト(著作権の都合上、一部見えづらくしています)
内容は小さすぎて見えないと思うのですが、ここでお伝えしたいのは、適性検査Ⅰ(令和5年度)の問題は5ページで、そのうち4ページが長文だということです。
昨今は私立中学でもかなり長い読解問題が出題される傾向はありますが、とにかく公立中高一貫校の長文読解はその名のとおり「長文」なのです!
検査と名前がついていても、試験同様に時間制限もあります。この問題だと45分間で長文を読み、3つの問題を解かなくてはなりません。しかも回答はすべて記述式です。読んで、理解して、問いの回答を考え、指定された文字数におさめて記述します。
何も対策をせず、いきなり小6でこの問題を時間内にしっかり解ける子はまずほとんど、いません。世の中には、親から見るとうらやましいほど「すんなりとできちゃう子」も確かにいますが、普通はやはり「傾向と対策」の勉強が必要です。
適性検査対策のポイントと家庭でできる学習法
- 新聞を読もう
- 本の感想を話し合おう
- パズルや計算ゲームで競争しよう
- 観察日記をつけてみよう
新聞を読もう
親子で新聞を読み、内容を要約して話し合ってみましょう。最初はスポーツ面や生活面などなじみやすいところから記事をピックアップすると、やりやすいですね。時事問題から「小学校教師の超過勤務」といった子どもに関連するテーマを選ぶのも良い方法です。
子どもは、受験勉強で机に向かい続けています。適性検査対策と構えるのではなく、たとえば夕食後にソファに座り、「こんなニュースがあったよ」とリラックスしながら話してみてはどうでしょう。適性検査では暮らしに身近なテーマの問題がよく出されます。さまざまな出来事に関心を持てるよう、家族から「今気になる話題」を提供し、話し合ってみるのもいいですね。
本の感想を話し合おう
同じ本を読み、感想を語り合ったり、意見交換をしてみたりしましょう。登場人物の性格について話し合う、物語の時代背景を一緒に調べてみる、いろいろなことができますね。本の中の難しい言葉を拾い上げて辞書で調べたり、類語辞典で似た意味の言葉を探したりすることで、語彙が増え、読解力だけでなく表現力の向上も期待できます。
パズルや計算ゲームで競争しよう
パズルや計算ゲームを活用し、親子で競い合うのも、机に向かう勉強とはスタイルが変わり、気分転換にもなります。
立体的なパズルは空間認識能力を鍛え、算数の図形や展開図の問題で役立ちます。計算も親子でスピードを競うことで、単純なドリル練習に少しでも変化をつけることができます。
観察日記をつけてみよう
小6の冬休みでは遅すぎますが、それより前であれば休みの時期を利用して植物や天気の観察日記をつけて、変化の様子を記録してみるのもおすすめです。
図鑑を見たり、インターネットで調べたりしながら、理科や社会の幅広い知識を増やし、記録を見て考察することで、資料問題の読み解き問題などで力を発揮できる可能性が高まります。
適性問題「基本方針」からわかること
ここで、都内の公立中高一貫校のひとつである「両国高等学校附属中学校」が公開している、適性問題の基本方針を見てみましょう。
公立中高一貫校は各学校にカラーがあります。そのため一概には言えませんが、上記の基本方針は、非常によくある「公立中高一貫校」適性検査の方針です。
これまで説明してきた通り、読解力や思考力、表現を含む記述の力や情報を読み取る力が重要なことがわかります。
こうした力は一夜漬けでつくものではありませんし、必死に暗記すればできる問題でもありません。そのため、塾や個別学習で、あるいは家庭教師の先生と学ぶだけでなく、前述したように日頃から家庭で「意識して子どもの力を伸ばす」ことが、適性検査対策では意外と大きなポイントになり得るのです。
適性検査対策で重要なのは「小学校の勉強」をマスターすること!
ここまで読みながら(同じ本を読もうと誘ったところで嫌がりそうだし)(新聞を見て議論するとか、ウチ的には無理〜!)なんて思ったかもしれません。「今までに学習した内容を基にして、分析、考察し、表現する」とか言われてもね……と、思った人も少なからずいるでしょう。
公立中高一貫校の適性検査では、私立中学の入学試験と違い、かならず「小学校で学んだ範囲」からしか出題されません。ただし、小学校の教科書にのっている問題とは違います。「小学校で学習した内容を基にして」ですから、学習した知識を応用する出題はあります。
ということは、つまり「小学校で学ぶ勉強はきっちりマスターしておいてね」ということなのです。
ここでは詳しく触れませんが、公立中高一貫校では「報告書」という、学校が提出する内申書のようなものも評価対象となります。報告書には通知表の成績が(厳密には若干、評価基準が違いますが)載ります。ですから、小学校での勉強と成績がとても重要なのです。
学校の勉強もおろそかにせず、地道に学力を積み上げていくことが大切です。
公立中高一貫校の適性検査対策に「過去問」を活用する
かつて公立中高一貫校がスタートした時には、その独特な出題形式や毎年のように傾向が変わることから、過去問を行っても「昨年とはまるで違う内容だった」という声が多く聞かれました。
しかし、今は公立中高一貫校の過去問も多く出ており、各校の特色や傾向もある程度定まっています。公立中高一貫校は、学校によって出題される内容が大きく異なる場合があります。私立中学と違い、公立中高一貫校は1校しか受検できません。志望校を決めたら、その学校の過去問を解くようにしましょう。
中学受験で親は子の「良い伴走者」になろう
公立中高一貫校の入試は難易度が高いとよく言われます。今では「中学受験は考えていないけど、公立中高一貫校は学費もかからないし、とりあえず受けるだけ受けてみようかな」という受験生はかなり少なくなっています。いわゆる「記念受験」の人が減り、受験者数は多少の減少傾向にあっても競争は激しいことには変わりありません。
中学受験は、親のサポートなくしては成り立ちません。公立中高一貫校の合格をめざして、親も子どもの良き伴走者でありたいですね。
参考:中高一貫教育/文部科学省
編集:オンライン家庭教師GIPS
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