「子どもが勉強してくれない…」「塾って何を基準に選んだらいいの?」「進路ってどうやって決めたらいいですか?」

勉強を取り巻く環境には答えのわからない悩みがたくさんあります。そんな悩ましい問題を専門家に直接相談し、解決のヒントをもらおう!というこちらのコーナー。

今回は神奈川県の進学校、栄光学園で校長を務めていた関根悦雄さんをゲストにお迎えしました。実際に数多くの生徒を導いてきた教育のプロのお話を聞いてみましょう!

関根悦雄元校長

<経歴>

  • 栄光学園校長(10年間)
  • ミクロネシア連邦の高校生に指導
  • フィリピン、インドネシア、オーストラリアの高校の視察

▼栄光学園高等学校・中学校HP
https://ekh.jp/

01

子供が勉強してくれないんのですが、どうしたらいいですか?

子どもとの正しい接し方とは?

親御様からのお悩みで多いのが「子供が勉強しなくて心配」という相談。「勉強をさせようと注意したら子どもと喧嘩になる…」、なんてこともあるみたいです。親御様はどのようにお子様の勉強に関わっていくのが正解なのでしょうか?

関根元校長

昔からそうですが、特にお子様を有名進学校に進ませたい親御様に多い悩みですね。親御様からすると確かにお子様を有名進学校に進ませるのはお子様自身のためという思いがあるのかもしれません。しかし、本当はお子様のことには口出しするべきではないのです。これは子育て全般でも同じことが言えます。お子様が赤ちゃんの時には全ての面倒を見てあげなければいけませんでしたが、成長に伴いお子様自身ができることが増えていきます。そこで親御様は何をするべきかというと、お子様ができることにはもう手を出さないで見守るということが必要なんです。

口は出さずにしっかり見守りましょう

関根元校長

口出ししてはいけません。あれこれ指示を出してもいけません。子供は失敗したらそこからちゃんと学びます。それをじっくり見守るということが必要なんです。危なくても大けがをしないのであれば手を出してはいけません。

口を出すわけでもほったらかしにするわけでもなく、じっくり見守る、と。例えばですけど、定期テストが近いお子様がいらっしゃったときは「勉強しなさい!」とおしりをたたくのではなく、しっかり手放して定期テストを失敗させてあげるくらいの気持ちでいる方が良いのでしょうか。

関根元校長

そうです。それが大事です。勉強もそうですが、何でも自分でやろうとしなければ面白くありません。人からやらされたという感覚があれば本物には育っていきません

【失敗=学び】失敗させてあげましょう

「勉強しなさい!」と言われた瞬間にやる気がなくなってしまったという話はよく聞きますよね。勉強をしていないときでもしっかり見守るのが大切なんですね。そして失敗しても自分で学ばせると。

関根元校長

人生の中でも成功から何かを学ぶよりも、失敗から学ぶことの方が多いと思うんです。そして社会人になってからの失敗は非常に影響が大きい。ですから子供のうちに失敗を経験して自分で学んでいくことが非常に大事です。そのために親御様は少しずつお子様から手を離しながら愛情をたっぷり注いでください。しっかり信頼するんです。

02

入試は何のためにあるの?

意識するべき事とは?

この春から受験生になる方もいらっしゃいますので、入試についてお伺いしたいと思います。私は受験生時代「そもそもなんで僕こんなに頑張っているんだっけ?」と受験の目的がわからなくなった経験があります。なんで私たちはこんなにも頑張って受験を乗り越えないといけないのでしょう?そもそも入試の目的とは一体何でしょうか?

関根元校長

入試の目的とは選抜、つまり選ぶということです。あるところに多くの希望者が集まるとその全部を受け入れることはできないから取りたい人を選ぶ、これが入試です。しかし、昔と比べると今は子供の数も減ってきたので入試は易しくなったという傾向があるかもしれません。

そうですね。大学によってはかなり簡単に入れるようなところも出てきています。

人気な学校には選抜が必要

関根元校長

しかし、いい高校、いい大学には入りたい人が多く集まるので、どうしても選抜試験というのをやらなくてはならない、というのが現状です。

今までは学校と募集人数のバランスでどうしても選抜しなくちゃいけないので入試を行っていたということですね。となると入試の目的は”選ばれること”なのでしょうか。

関根元校長

でも選ばれるかどうかというのは自分ではわからないわけですからね。

そうですね。自分ではどうにもならないですよね。私たちは「人数の関係上やむを得ず選抜されている」から仕方なく勉強して入試を受けているのでしょうか。

【教育=人格形成】教育全体を考える

関根元校長

一度教育全体のことを考えてみるのがいいんじゃないかなと思います。つまり、自分が将来社会人として生きていくために必要な力を学校教育を通して身に着けているのだと。教育の目的はあくまでも人格形成です。人格を定義するのは難しいですが、どんな人でも一人一人存在していいということが保証されていくのが人格形成です。何のために人格形成を目指すのかというと、一人一人が社会人として生きていくことができるように、です。ですから単に学校でただ知識を身に着けるとか試験でいい点数を取るというのが目的ではありません。

勉強の目的は知識を身に着けるとか大学に入るとかそういったことではないと。さらにその先の話、自分で生きていく力を身に着けるために勉強するってことですね。

関根元校長

そのためには将来はこういう風に生きたいなというイメージと、そのために必要な知識ができるだけ早い段階でわかることが大切です。特に大学を選ぶときにはそれが必要になってくると思います。何の将来の見通しもないのにただ大学に行くというだけでは目的としてはちょっと弱くなってしまうのではないかと。将来自分がどういう活躍ができるのかということをある程度考え、それを目指していくとスムーズなんじゃないかなと思います。

03

これからの入試は何が大事?

AIに勝つために必要な力とは?

続きまして、これからの入試についてお伺いします。最近ではAIの発展が目覚ましく、東大の入試問題でもAIならばある程度は解けるという話も耳にします。「AIに仕事を奪われる」みたいな話題も出ていますが、そういったことも踏まえて、今後の入試ではどのような力が求められていくと思いますか。

関根元校長

AIにとって代わられる分野というのは確かにあります。それは人間が競争しても勝てないところだと思います。しかし、人間にしかできないこともあります

それは一体どういうものなんでしょう。

最近の入試では、
論理的な思考力が問われている

関根元校長

AIというのは基礎データがないと判断ができません。ところが人間にはそれだけの大量のデータがなくても、物事の状況だけでなく単なるデータからは得られないものまでも感知し、それを根拠にして判断を下すことができます。昔の入試では単なる知識の量が多いかどうかで判断されたかもしれませんが、これからはもっと論理的に考えられるかどうかが大事になってきています。最近の入試でも既にそういう面が重視されつつあるかもしれません。

確かに知識量でAIと戦おうとしたら人間は絶対に勝てません。AIにできないことをしようとしたら自分の頭で考えて判断するのが一番大事で、これからの入試もそういう力が求められていくだろうということですね。

関根元校長

そして必要なデータは自分で集める。AIにはそこまではできません。判断に必要なデータも自分で集める。そのデータが必要かどうかも自分で判断する。そして集めたデータをちゃんと分析して考えて判断を下す。その判断に基づいて行動し、行動の結果にはちゃんと責任をとる。これが大事です。これは人間にしかできないと思うんです。

04

どうしたら将来成功できますか?

成功者に共通する事とは?

関根さんは栄光学園で多くの生徒さんを見守られてきました。教え子の中には自分のやりたいことを自分の人生として実現された方が多くいらっしゃると思います。例えばどのような方がいらっしゃるのでしょう?

関根元校長

栄光学園では「人のために何かをする」ということを非常に大事にしています。国のため世界のために官僚になったりする人も以前はかなりいましたし、最近では、医者になる者も増えてきました。ですが、何が成功といえるのかと言えば、やはり自分の力が発揮できる仕事に就くことだと思います。それが社会的に認められるかは二の次です。そうやって考えると多くの教え子が成功してるんじゃないかと思います。

多くの教え子さんが、自分の力を活かせる仕事に就いているんですね!でも、自分のやりたいことを叶えるというのはなかなか簡単なことではないですよね。その方たちはどのようにしてそれを実現されたのでしょう?共通してみられる行動や習慣はあるのでしょうか?

関根元校長

なんでもそうですが、自分一人だけで行うというのはできないんじゃないかなと思います。どうしても人と絡んで何かをするということが必要になってくるような気がするんです。つまり、ある程度人間関係がスムーズにできる力を持っているということが一つ。もう一つは、自分のほんとうにやりたいことを早く見つけてそれに向かって必要なことを身につけようとしている。この辺が大事なことじゃないかなと思います。

やりたいことを探すには、

自分自身について知ることが大事!

しかし、自分のやりたいことを見つけるのは結構難しいことだと思います。どういったことをきっかけにすればよいでしょうか。

関根元校長

自分のやりたいことを見つけるためには、いろんな社会のことを知らなければなりません。それと同時に自分自身についても知る必要があります。例えば学校ではいろんな人と接しますよね。その中でAさんはこういう特徴があるけども自分にはまた違う特徴があることに気が付く。AさんBさんCさん色々違った人と関わることによって自分の唯一さがわかってきます。それを大事にしていくと良いと思います。

他人と関わっていく中で自分を見つけていくのが大切ということですね。

関根元校長

はい。それが学校というシステムで大事なことです。

つまり学校の教室の中でかたまりになって勉強するのもちゃんと意味があるということですね。

関根元校長

そうです。なので授業じゃなく遊びの時間も含めて、自分は人と違う、そして違っていいんだということをわかるということが大事だと思います。

広い世界に目をむけよう!

自分にできることが見えてくる!

それでは今自分の夢を実現できていない、まだ一歩踏み出せていない子に対して「何をしたらいいのか」といったアドバイスはありますか?

関根元校長

それはね、自分には何ができるのかということを予測して、さらに自分が社会の中で必要とされているかどうか、それに気づくことです。これはなにも日本に限られるわけではありません。世界中を見てください。実際に困ってる国もたくさんあります。そういった中で「自分には何ができるかな」とちょっと考えてみたりする。こういうことが大事じゃないかなと思うんです。