給料だけでは将来が少し不安」「自分のスキルで収入を増やしたい」そんな思いから副業に興味を持つ公務員の方は少なくありません。

2026年4月には国家公務員の副業基準が見直され、新たな選択肢が広がりました。地方公務員についても、2025年に兼業に関する通知が出て、国から後押しする動きがあります。

しかし大前提として、公務員の副業には厳しい制約があります。無許可で始めると懲戒処分につながる可能性もあるため、ポイントを押さえて検討しなければなりません。この記事では、国家公務員・地方公務員の副業ルールや許可が必要なケース、始めやすい副業例を分かりやすく解説します。

公務員の副業が制限されているのは、公務の信頼性と公正性を守るためです。国家公務員も地方公務員も、次の3つの原則が根底にあります。

  • 職務専念義務
  • 職務の公正な執行の確保
  • 公務の信用の確保

公務員は「全体の奉仕者」として、特定の利益ではなく公共の利益のために働く立場です。副業に注力しすぎて本来の職務に集中できないようなことは、あってはなりません。

また、副業に関連して特定の事業者と利害関係が生じるケースや、職員・職務の品位を損ねるケースも考えられます。このため、公務員の副業には制限が設けられています。

公務員の副業は、国家公務員法103条・104条および地方公務員法38条を根拠に規制されています。国家公務員・地方公務員ともに、許可なく営利企業を営んだり、報酬を得て事業や事務に従事したりすることはできません。一方で、具体的な許可基準には違いがあります。

国家公務員は人事院の基準で判断される

国家公務員の副業は、人事院が定める全国共通の基準に沿って判断されます。これまでの自営兼業の承認対象は、不動産等賃貸、太陽光電気販売、および農業等の家業に限られていました。

これらに加え、2026年の制度改正では、知識・技能を生かした事業社会貢献に資する事業が新たに承認対象となりました。詳しい改正内容は後述します。

地方公務員は自治体ごとに基準が異なる

地方公務員の副業の許可基準は、各自治体に委ねられています。国の基準に合わせている自治体もあれば、地域の実情を踏まえた独自の基準を設けている自治体もあります。2025年6月には、総務省から兼業を推進する通知が出され、国としての方向性も示されました。

この通知以前から、兼業を積極的に認めている自治体もあります。職員のスキルアップにつながったり、地域の実情を知って住民サービスに反映できたりといった成果も報告されています。

副業を検討する前に確認すべきこと

副業を始める前には、所属する自治体・組織の兼業に関する規則を必ず確認しましょう。

たとえば同じ国家公務員でも、所属先によって、利害の生じ得る副業は異なります。地方公務員の場合は、可能な事業内容や、地元の企業で働くことが認められているかどうかなど、自治体によって差があります。

どのような副業が認められているかは所属先によって異なるため、必ず自分の所属先に確認することが大切です。

2026年4月の制度改正では、国家公務員に従来から認められていた副業の基準緩和に加え、新たな事業が承認可能となりました。

新たに承認対象になった副業

新たに承認の対象となったのは、次の2種類の自営兼業です。

職員の有する知識・技能をいかした事業

趣味や特技によって身につけた知識や技能を生かして、個人として事業を営む場合が対象です。人事院が示す典型例は次のとおりです。

  • 自ら制作したハンドメイド品・絵画・写真・音楽等の販売
  • スポーツや芸術の教室の開催(自ら指導を行うもの)
  • 出版社を通さない自費出版

クラウドソーシングなどで定型的なサービスを提供する事業や、転売事業は想定されていません。

社会貢献に資する事業

公益に資する活動を伴う事業を、自営の形で行う場合が対象です。典型例として挙げられているのは以下の事業です。

  • 地域振興に関するイベントの主催
  • 高齢者向けの買物代行などの生活支援サービス

「公益に資する活動」とは、保健・医療・福祉の増進を図る活動、社会教育の推進、農山漁村・中山間地域の振興、学術・文化・芸術・スポーツの振興などです。

不動産・太陽光の基準緩和

従来から承認対象だった不動産等賃貸と太陽光電気の販売についても、基準が見直されました。

不動産等賃貸は、見直し前は1年間の賃料が500万円以上ならば、全てのケースで承認が必要でした。見直し後は、部屋数10室未満かつ床面積が600㎡未満の場合に、一律で承認不要となっています。

太陽光電気の販売は、承認が必要な定格出力が、10kw以上から50kw以上へ引き上げられました。

地方公務員への波及

地方公務員においては、兼業を推進する自治体がある一方で、許可の基準を設けていない自治体も、2024年の時点で36%残っています(総務省調査より)。今回の国家公務員の制度見直しを受けて、こうした自治体でもルール整備の動きが広がっていくと期待されます。

参照:営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)|総務省

公務員の副業は、主に以下の4つの軸で判断されます。

4つの判断軸

判断軸判断ポイント
利害関係職務と副業先の間に利害関係が生じないこと
公益性不特定多数の利益につながる活動であること
時間継続的に時間を割くかどうか
目安の活動時間を超えていないか
報酬一定の規模を超えているか
営利目的かどうか

副業に割いてよい時間は、国家公務員では週8時間または1ヶ月30時間を限度とし、勤務日には1日3時間以内におさめる指針があります。地方自治体でも、国家公務員の基準を参考にするケースがみられます。

報酬に関しては、経費差し引き前の収入見込みが年間20万円を超えるかどうかが、承認を要する一定の目安です。実際には、店舗などの設備の有無や、客観的に見て営利目的かどうかなどを含めて総合的に判断されます。

次に、副業として考えられる活動例と、一般的な扱いを紹介します。

活動例と一般的な扱い

活動例一般的な扱い
投資(株式・投資信託など)承認不要
不用品販売(一時的なもの)承認不要
ハンドメイド品の継続販売原則要承認
執筆活動条件により承認が必要
講師活動・講演条件により承認が必要
発信活動(ブログ・動画など)条件により承認が必要
NPO・ボランティア(無報酬)可能な場合が多い
NPO・ボランティア(有報酬)原則要承認
飲食店等のアルバイト原則不可または要承認
農業・林業承認対象
家業の手伝い承認対象

アルバイトや従業員としての兼業は、国家公務員では原則として認められません。地方公務員でも、許可の可否は自治体や活動内容によって異なります。

活動が一時的な場合や趣味の範囲にとどまる場合は、承認不要であるケースも少なくありません。一方で継続的に活動する場合は、収入に関わらず承認が必要となるケースもあります。判断に迷う場合は、事前に所属先へ確認するのが安心です。

許可を得ないとどうなる?副業がバレる主な理由

隠れて副業を行なっているつもりでも、意外なところから把握されるケースがあります。主なルートは、住民税・SNS・口コミの三つです。

副業収入が一定額を超えると確定申告が必要となり、その結果、住民税の金額が変わります。職場に住民税の通知が届く特別徴収の形を取っている場合、収入の変化が人事担当者の目に触れることがあります。

また、SNSでの副業活動の発信や、知人・顧客の口コミから、職場へ情報が届く事例も少なくありません。たとえ匿名や顔を伏せた状態で発信していても、身近な人に気付かれるケースはあるものです。

許可を得ずに副業をしていた場合、処分や罰則の対象となる場合があります。逆に正式な副業であれば、活動が知られることで、地域への貢献が評価されるケースも少なくありません。必ず許可を得ておくのが大切です。

ここでは2026年改正で選びやすくなった副業を中心に、公務員が始めやすい副業を紹介します。

ハンドメイド・フリマ販売

自作のアクセサリーや雑貨、イラスト作品などを販売する副業です。2026年の制度見直しでは、知識や技能を生かした自営兼業の典型例として示されました。

初期費用が比較的少なく、休日を活用して取り組みやすいのが魅力です。一方で、継続的な販売を行う場合は承認が必要になるため、事前の確認が欠かせません。

ブログ運営・動画配信

ブログやYouTube、SNSなどを通じて情報発信を行い、広告収入やアフィリエイト収入を得る副業です。公務で知り得た情報の発信や、職務上の立場を利用した発信は避け、所属先のルールに沿って運営しましょう。

趣味や特技、資格学習の記録など、公務と離れたテーマを選ぶと、安心して取り組みやすいでしょう。

イラスト・Web制作などのスキル提供

デザインやプログラミング、イラスト制作といったスキルを生かして報酬を得る副業です。2026年改正で承認対象となった「知識・技能を生かした事業」に該当しやすく、専門性がある方ほど収益化を目指しやすいでしょう。

受注量が増えると本業への影響も考えられるため、活動時間の管理が重要です。

講師活動・オンライン家庭教師

知識や技能を生かして人に教える副業です。スポーツや芸術の教室を開いて自ら指導したり、依頼を受けて講演やセミナーを行ったりする活動が該当します。対面だけでなく、オンラインでの指導も含まれます。

オンライン家庭教師も、講師活動の一つとして検討できる副業です。担当時間や受け持つ生徒数を調整しやすく、週休日を中心に活動しやすいため、公務員でも取り組みやすいでしょう。

ただし、オンライン家庭教師サービスを通じて働くケースでは、自ら教室を運営する場合と異なり、営利企業への従事と判断される可能性があります。許可の可否は所属先や業務内容によって異なるため、事前に確認したうえで検討してください。

ここでは、実際に副業を考える際に、知っておきたい流れと注意点をまとめます。

副業開始までの4ステップ

国家公務員の自営兼業を例に、検討開始から実際に始めるまでの流れを説明します。特に注意する点は、開業届の提出前に、必ず所属先へ相談することです。

所属先の規則を確認する

まず、所属先の服務規程や規則を最初に確認します。どのような副業が承認対象となるかや、必要な書類も確認しましょう。

副業の計画を立てる

事業の内容や目的、営業日・営業時間、年間の収入見込み額といった計画を立て、事業計画書に書き起こします。承認基準をどのように満たすかの説明も、必要に応じて盛り込みましょう。

承認権者へ相談する

副業を実際に開始する前に、必ず上司や所属長といった承認権者へ相談してください。事業計画書の案と、開業届の下書きを提出し、実際に承認してもらえそうか問い合わせます。

申請書を提出し、承認を受ける

承認の見込みが立てば、自営兼業承認申請書を記入し、事業計画書等の必要書類を添えて提出します。無事承認されれば、副業活動を開始できます。

税務署へ開業届を提出するタイミングは、所属先からの指示に従いましょう。下書きを提出してあれば、実際の開業届の写しは、承認後速やかに提出すれば問題ありません。

副業を始めてからの注意点

副業を始めたら、承認を受けた内容を守るのが大切です。「週休日のみ事業を行う」として承認を受けたのに、勤務日にも常態的に作業や連絡を行っていると、承認を得ずに内容を変更しているとみなされるかもしれません。処分の対象となる可能性もあるため、活動時間や収入などに変更がある場合は、必ず事前に承認権者へ相談してください。

また、副業による年間の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必須です。20万円以下では確定申告の義務はありませんが、わずかでも利益が出ている場合は、お住まいの自治体へ住民税の申告が必要となるため要注意です。

確定申告であれば、全国統一の申告手順が整っており、住民税も自動で連携されます。副業の所得が20万円以下でも、確定申告に慣れておくと、長期的に手続きが楽になるでしょう。

2026年の制度改正により、国家公務員の副業の基準が緩和されました。申請・承認が不要になったわけではありませんが、知識・技能をいかした自営兼業や、社会貢献に資する自営兼業が承認の対象となり、選択肢が広がりました。

地方公務員でも、副業ルールの整備・公表を進める自治体が増えており、「副業をしたい」と思ったときに動きやすい環境が整いつつあります。副業を検討している方は、まず所属先の規則の確認から始めてみてはいかがでしょうか。

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