教員という職業に興味を持つ方や、すでに現場で働いている方にとって、年収の実態は気になるテーマの一つです。なかには「残業代が出ないのは本当?」「頑張ってもなかなか給料が増えないのはなぜ?」と疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

公立学校の教員は、地方公務員として安定した給与制度のもとで働けますが、民間企業と異なり能力が評価されにくい面もあります。本記事では、小学校・中学校・高校の校種別に平均年収を整理したうえで、給与の内訳や各種手当の概要、さらに近年進んでいる処遇改善の動向まで解説します。

最初に、学校種別の平均年収を紹介します。厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagより、平均年収と平均年齢をまとめました。

学校種別の平均年収(令和6年の統計調査を元に)

平均年収平均年齢
小学校726.5万円42.3歳
中学校726.5万円42.3歳
高校678.8万円43.5歳
大学・短期大学1093.3万円58.1歳

参照:職業情報提供サイトjob tag|厚生労働省

比較として、民間企業全体の平均給与は478万円です。また、民間の正社員(正職員)の平均給与は545万円となっています。


小学校・中学校教員の平均年収726.5万円は、民間企業の平均給与を上回っており、給与水準の高い職業といえます。高校教員も678.8万円であり、民間平均を大きく超えています。

また、小学校は全体の98.3%、中学校は91.4%、高校は72.0%が公立学校です(job tag掲載データより)。公立学校の教員は地方公務員であり、安定性の高い職業ともいえます。

次節以降では、教員の年代別の平均年収と、公立学校の給与体系を解説していきます。

参照:令和6年分 民間給与実態統計調査|国税庁

小学校・中学校の教員は、公務員として同一の教育職給料表が適用されるのが一般的で、平均年収も同水準です。ここでは年代別・役職別にデータを整理します。

年代別平均年収|小学校・中学校

公立の小学校・中学校教員は、勤続年数が重なることで着実に年収が上がる仕組みになっています。以下は、令和6年賃金構造基本統計調査の結果を元に計算されたデータです。

年代平均年収
20〜24歳390.31万円
25〜29歳482.81万円
30〜34歳572.49万円
35〜39歳699.05万円
40〜44歳798.7万円
45〜49歳871.44万円
50〜54歳905.32万円
55〜59歳966.53万円
60〜64歳840.47万円
65〜69歳680.23万円

参照:
小学校教員|job tag|厚生労働省

中学校教員|job tag|厚生労働省

20代前半の390万円台から、50代後半の966万円までで、平均年収が2.5倍近く増加することが分かります。これは、基本給が毎年増えていく仕組みに加え、役職によっても年収が上がっていくためです。

60代以降は、定年制度や再任用の影響で、平均年収は下がる傾向にあります。

役職別平均年収|小学校・中学校

次に、役職別の年収を見てみます。以下は文部科学省による、役職・年齢別の給与試算です(令和5年度版)。

役職年齢年収
教諭37歳約590万円
教諭42歳約646万円
主幹教諭46歳約705万円
教頭49歳約794万円
校長54歳約847万円

参照:公立学校教員の職名別・年齢別給与試算(令和5年度)|文部科学省

教員の給与の増え方は、年齢が上がるにしたがい緩やかになる傾向がありますが、昇任により給与を増やしていくことが可能です。

また、東京都のモデルケースでは、50代後半の教員における役職別の年収は以下のとおりです。

役職年収
教諭700万円台後半
主任教諭800万円台
主幹教諭900万円台
副校長1100万円台
校長1200万円以上

参照:昇給モデルはどうなっているの?|東京都公立学校教員採用ポータルサイト

教員の給与は年功序列のイメージが強いものの、実際には役職も、年収を左右する大きな要素となっています。

高校教員も、公立学校の場合は小・中学校と同じ教育職給料表が適用され、給与水準も同等の場合が多いです。しかし、高校教員全体の平均年収は678.8万円となっており、小学校・中学校教員と比べるとやや低く見えます。年代別の年収を見てみましょう。

年代別平均年収|高校

高校の教員の年収は、小学校・中学校と同じく年齢とともに上昇し、55〜59歳にピークを迎えます。以下は、令和6年賃金構造基本統計調査の結果を元に計算されたデータです。

年代平均年収
20〜24歳348.65万円
25〜29歳442.95万円
30〜34歳530.8万円
35〜39歳634.7万円
40〜44歳722.74万円
45〜49歳808.74万円
50〜54歳842.67万円
55〜59歳893.03万円
60〜64歳791.19万円
65〜69歳629.07万円

参照:高等学校教員|job tag|厚生労働省

ピーク年収は893万円で、小・中学校の966万円に比べて低くなっています。高校は、公立学校の割合が72.0%と小・中学校に比べて少ないことや、定時制高校や通信制高校といった勤務体系の異なる学校も含まれることが、平均値に影響していると考えられます。

実際に公立高校でフルタイム勤務を続けた場合の給与水準は、小・中学校と大きく変わるものではありません。

公立学校の教員の年収は、基本給と各種手当で構成されています。

基本給の主な要素は、給料表を元に決まる基本給(給料月額)と、残業代の代わりとされる教職調整額です。各種手当は、教員特有のものと、すべての公務員で共通のものがあります。

公立学校教員の年収の構成(太字は全員に支給)

給料基本給
 給料表で決まる基本の月給

教職調整額
 残業代に相当する。
 2026年度は基本給の5%

・給料の調整額
 特別支援教育に直接従事する教員に支給
手当・教員特有の手当
 義務教育等教員特別手当
 教員特殊業務手当
 へき地手当 など

・公務員に共通の手当
 期末・勤勉手当(ボーナス)
 通勤手当
 住居手当
 扶養手当
 地域手当
 宿日直手当
 管理職手当 など

ここでは基本的な給料の部分と、教員に特徴的な手当について解説します。なお、それぞれの詳しい条件や金額は、自治体ごとに条例で定められており、地域によって異なる場合があります。

基本給(給料月額)【全員】

公立学校の教員の基本給は、都道府県や政令指定都市が定める「教育職給料表」に基づいて決まります。給料表を構成するのは「」と「号給」の二軸です。

「級」は職務の難易度や責任に応じた区分で、民間でいう役職に相当します。多くの自治体では5段階が設けられ、助教諭が1級、一般教諭が2級、主幹教諭が特2級、教頭が3級、校長が4級といった区分です。級が上がることは民間における昇格に相当し、大幅な給与増につながります。

「号給」は同じ級のなかでの給与区分で、号給の上昇は民間における昇給に相当します。級によっては100を超える号給が設定されており、勤続年数の積み重ねによって少しずつ上がっていきます。能力や実績よりも、年功が給与に反映されやすい構造であることが、教員給与の特徴です。

教職調整額【全員(管理職以外)】

教職調整額は、管理職を除く一般の教員に対して一律に支給されます。時間外勤務手当の代わりとして定められた金額で、令和8年(2026年)4月時点では、給料月額の5%です。

また、学級担任には別途加算がつきます。自治体によっては、複数担任や副担任にも、実情に応じた加算が行われます。

教職調整額は、令和7年度の法改正により、割合が段階的に引き上げられることとなりました。詳しくは後ほど解説します。

給料の調整額【該当者】

教職調整額と似た名前ですが、こちらは特別支援教育に直接従事する教員が対象です。特別支援学級の担任や、特別支援学校に勤務する教員に対し、基本給の3%程度の定額が支給されます。

義務教育等教員特別手当【全員】

小学校・中学校・高校などに勤務する教員すべてに支給される手当です。優秀な人材を教職に確保することを目的として設けられたもので、基本給の1.5%程度の定額が支給されます。

期末・勤勉手当【全員】

民間のボーナスに相当するもので、年2回(6月・12月)に支給されます。国家公務員の給与に関する人事院勧告にならうのが一般的で、令和7年では年間4.6ヶ月分程度です。

教員特殊業務手当【該当者】

教員特有の特殊な業務を行った際に加算される手当です。以下のような業務が該当します。

  • 非常時・災害時における緊急業務(時間外または休日)
  • 修学旅行などの引率(宿泊を伴うもの)
  • 部活動の指導(休日)
  • 部活動の大会などの引率(宿泊を伴うまたは休日)

へき地手当・地域手当【該当者】

勤務地域に応じて支給される手当として、へき地手当と地域手当の2つがあります。

へき地手当は教員特有の手当で、山間部や離島といったへき地学校に勤務する教員へ支給されます。支給割合は、地域に付けられた級数に応じて、給料等の25%を超えない範囲内です。

地域手当は公務員に共通の手当で、民間の賃金が高い地域に勤務する場合に支給されます。支給割合は、20%から4%まで5段階の区分があります。

管理職手当【該当者】

管理職員には、教職調整額が支給されない代わりに、管理職手当として給料の一定割合が支給されます。管理職手当は、ほかの公務員と共通の手当で、役職により支給割合が異なります。
公立学校で管理職に該当するのは、校長・副校長・教頭です。

近年、教員不足や長時間勤務の問題が社会的に注目されるなかで、教員の処遇改善を進める動きが加速しています。

令和7年(2025年)6月、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)等の一部を改正する法律が成立し、教員の給与制度に複数の変更がありました。

参照:教師を取り巻く環境整備について|文部科学省

教職調整額の段階的引き上げ

最も注目されているのが、みなし残業代とされる「教職調整額」の引き上げです。

改正法により、令和8年(2026年)1月から毎年1ポイントずつ段階的に引き上げが行われ、令和13年(2031年)1月には10%となる予定です。教職調整額はボーナスの算出基礎にも含まれるため、月給だけでなく、年収全体としてもプラスとなります。

教員の職務は授業だけでなく、学校行事の準備、部活動の指導、保護者との面談、さらに長期休業中の研修まで、時間外に及ぶ業務が少なくありません。そのため、時間外勤務の管理をほかの職種と同じように行うことが難しいとして、一律支給の仕組みが採用された経緯があります。

しかし、これまでの「給料月額の4%」という水準は、給特法が制定されてから約50年間変わっていませんでした。現在の勤務実態と乖離が大きくなっていることで議論の対象となり、今回の法改正に至りました。

新たな役職・手当の創設と業務量の管理

改正では、従来の管理職と一般教諭の間に「主務教諭」が新設されました。校務全般を総合的に調整する役割を担うもので、役職手当が加算されます。

また、学級担任を持つ教員への手当加算も盛り込まれており、担任業務の負担が給与面で評価されることになりました。

あわせて、教員の時間外勤務時間を月平均30時間程度に抑えることを国の目標として定め、各自治体の教育委員会に「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定と公表を義務付けています。さまざまな改革を通して、教員の処遇改善と、長時間勤務の是正を進めようとしています。

ここでは、初任給や退職金、生涯年収、年収の上げ方といった疑問に答えます。公立学校の教員の給与は、地域や自治体によって異なりますが、平均値や参考値から傾向がつかめます。

教員の初任給はどれくらいですか?

大学卒業後に採用された教員の初任給(諸手当を含まない基本給)は、おおむね月額22万円前後です。これに教職調整額や地域手当が加わり、実際の給与となります。年間では勤勉手当や期末手当も加わるため、年収としては400万円前後が目安です。

年収は、地域手当やへき地手当に左右されます。たとえば東京都では、採用1年目の想定年収が約469万円とされており、地域手当(特別区は給与の20%相当)の影響が大きいです。一方で、地域手当のない地方都市では、初年度年収が350〜400万円程度となるケースもあります。

参照:
第4表 初任給|令和6年 地方公務員給与の実態

徹底解析!〜働く環境〜|東京都公立学校教員採用ポータルサイト

教員の給与制度|東京都教育委員会

教員の退職金はどれくらいですか?

公立学校に25年以上勤続し、定年退職した方の退職手当は、平均で約2,200〜2,300万円です。自治体や勤続年数・役職によって異なりますが、勤め上げて定年退職した場合の退職金は、民間の大企業と同等か近い水準といえます。

なお、在職期間が極めて短い場合は退職手当が出ません。また、自己都合退職の場合も支給率が下がるため、注意が必要です。懲戒免職や重大な非違行為があった場合も、退職手当が支給されないことがあります。

参照:第9表の1 団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額|令和6年 地方公務員給与の実態

教員の生涯年収はどれくらいですか?

例として、東京都内の公立学校で定年(60歳)まで勤めた場合の生涯年収の例は以下のとおりです。

東京都教員のモデル年収例

最終役職生涯年収の例(退職金を含む)
教諭約2億8,600万円
主任教諭約3億700万円
主幹教諭約3億2,600万円
副校長約3億6,000万円
校長約3億7,900万円

参照:徹底解析!〜働く環境〜|東京都公立学校教員採用ポータルサイト

これは東京都の数値であり、地域によって異なります。

なお、社会全体における平均的な生涯賃金(退職金を含む)は、大卒の男性で約2億8,100万円、大卒の女性で約2億2,800万円です。東京都の教員の生涯年収は、これらを上回る水準です。

参照:生涯賃金など生涯に関する指標|ユースフル労働統計2025

教員で年収1,000万円は可能ですか?

公立の小学校・中学校・高校の教員として、年収1,000万円に達するケースは多くありません

先に示した年代別のデータでは、55〜59歳の小学校・中学校教員の平均年収が966万円となっており、この水準が公立教員の実質的な上限に近いといえます。ただし、長年勤務して管理職となった場合や、地域手当が高い都市部に勤務している場合では、1,000万円を超えるケースもあります。

なお、大学や短期大学の教員であれば、年収1,000万円を超えるケースも比較的一般的です。大学・短期大学教員の平均年収は1,093万円となっています。

参照:大学・短期大学教員|job tag|厚生労働省

教員が年収を上げる方法はありますか?

教員が収入を増やす手段として、主に以下の方法があります。

  • 専修免許状を取得する
  • 役職に就く
  • 長年勤める
  • 勤務地を変える

教育等で単位を得ても取得可能です。一部の自治体では、専修免許状を持っていると給与の加算が増えるほか、号給の換算が有利になる場合もあります。

主幹教諭・教頭・校長などの選考試験を受けて役職に就けば、職務の級や手当が変わり、年収も大幅に増加します。また、長年勤続することでも号給が上がっていき、基本給を着実に増やすことが可能です。

さらに、地域手当の割合が高い都市部や、離島や山間部といったへき地での勤務も、手当が収入に影響します。自治体をまたいで異動する場合は、再度採用試験の受験が必要となる場合もありますが、勤務地の選択は、長期的な収入設計において考慮に値する要素です。

教員の平均年収は、小学校・中学校で726.5万円、高校で678.8万円と、民間の平均給与を大きく上回る水準にあります。公立学校の教員は、地方公務員として年功給が基本であり、勤続年数と役職に応じて収入が上がる仕組みです。

給与は基本給と各種手当で構成され、各自治体の教育職給料表をもとに支給されます。令和7年の給特法改正により、令和8年(2026年)1月から教職調整額の段階的な引き上げが始まったほか、学級担任手当の加算や新たな役職の創設も行われ、教員の処遇改善が進められています。

安定した年収水準と充実した手当制度は、教員という職業の魅力の一つです。将来的なキャリアや生活設計を考えるうえで、本記事の内容が参考になれば幸いです。

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