「世界一の教育」として長年注目を集めてきたフィンランド教育。皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ところがここ数年の間、その“理想の教育”に思わぬ変化が起きています。国際学力調査での成績が下がり続け、フィンランド政府自身も「教育がうまくいっていない」と認める状況になっているのです。
「あの素晴らしいと言われていたフィンランドの教育に何が起こったの?」と思われる方も多いでしょう。
今回は、その真相を探りながら、それでも学ぶべきフィンランド教育の本質を見つめ直してみたいと思います。お子さんの教育について悩んでいる保護者の方、海外の教育に興味をお持ちの方にとって、これからの教育を考える大切なヒントが見つかるはずです。
デメリットもある?フィンランド教育の意外な課題

「フィンランドの教育って完璧じゃなかったの?」そう思われる方も多いかもしれません。実は、かつて世界中から羨ましがられたフィンランドの教育にも、見過ごせない問題が出てきているのです。
深刻な学力低下の実態
2000年代初頭、フィンランドはPISA(国際学力調査)で常にトップクラスの成績を収めていました。ところが近年、その順位が急降下しています。特に心配なのが数学的リテラシーの低下です。
フィンランドの数学的リテラシーは、2003年には2位だったのが、2022年には20位と大きく下げています。
自由すぎる教育の落とし穴
フィンランドが1990年代に行った教育改革では、次のような大胆な変更が行われました。
- 宿題の大幅削減
- 試験の削減
- 個性重視の学習スタイルの導入
一見すると子どもにとって、やさしい教育に思えますが、「自由すぎる」アプローチが思わぬ副作用を生んでいるようです。学習意欲の低下や、できる子とできない子の格差拡大が問題となっています。
現代ならではの課題も
さらに、現代的な問題も浮上しています。フィンランドでは、多くの生徒がスマートフォンやデジタル機器が授業の妨げになっていると感じています。2025年夏には、小中学校でのスマートフォン使用が大幅に制限される法律が施行されるそうです。
でも、これらの課題があるからといって、フィンランドの教育を全否定する必要はありません。問題があるということは、逆に言えば改善の余地があるということ。そして、やはり学ぶべき点も多いのです。では、そのメリットとは何でしょうか?
フィンランド教育のメリットと特徴を知ろう

課題がある一方で、フィンランドの教育には他の国にはない魅力的な特徴がたくさんあります。特に「子どもの幸せを一番に考える」という姿勢は、日本の保護者の皆さんにとっても参考になる部分が多いはずです。
詰め込み教育とは正反対の「自立型学習」
フィンランドの教室をのぞいてみると、日本とはまったく違う光景が広がっています。
日本の教室
- 先生が前に立って一斉に教える
- みんな同じペースで同じことを学ぶ
- 正解があらかじめ決まっている
フィンランドの教室
- 子どもたちが自分のペースで学ぶ
- 勉強方法も時間配分も自分で決める
- 「なぜ?」を大切にする探究型の学び
フィンランドの先生は「知識を教え込んだら、学べないでしょう」とよく言うそうです。確かに、答えを教えてもらうより、自分で考えて見つけた答えの方が身につきますよね。
子どもの幸福度を最優先に
フィンランドの考え方
- 最優先:子どもの幸福度(ウェルビーイング)
- その結果として:学力も自然についてくる
もちろん、日本でも子どもの幸福度は重視されていますが、学校は教育機関であり、知識を学び、学力を伸ばし、同時に社会性を身に着けていく場として捉えられています。

自己肯定感を大切にするということなのでしょうか。
たしかに、子どもが安心して過ごせる環境があれば、自然と学びにも前向きになれるというのは納得できます。
ただ一方で、やはり学校は勉強の場であり、社会に出るための知識や経験を積む場所、という日本の教育の立ち位置のほうがしっくりくるかも……。
誰一人取り残さない支援体制
フィンランドの教育で素晴らしいのは「落ちこぼれを作らない」という徹底した姿勢です。
支援内容 | 詳細 |
---|---|
教育費 | 義務教育から大学院まで完全無料 |
給食 | 無料で栄養バランスも考慮 |
特別支援 | 困っている子には手厚いサポート |
格差対策 | 学校間・地域間の差を最小限に |
「うちの子、勉強についていけるかしら……」と心配をする保護者の方も多いと思いますが、フィンランドではそんな不安を社会全体で解決しようとしているのですね。
確かに魅力的な教育方針です。では、日本の教育とはどこが違うのでしょうか?違いを知ることで、それぞれの良さがより明確になってきます。
フィンランド教育と日本の教育、ここが違う!

同じ「教育」でも、フィンランドと日本では大きく異なります。
評価方法の根本的な違い
項目 | 日本 | フィンランド |
---|---|---|
テスト | 定期テスト・受験重視 | 義務教育期間中は全国統一テストなし |
評価基準 | 他の子との比較(偏差値) | 個人の成長過程を重視 |
通知表 | 5段階評価が一般的 | 文章による詳細な評価 |
日本のお母さんが「うちの子、テストで何点取ったの?」と気になるのは当然ですが、フィンランドでは「この子なりにどう成長したか」を見ているようですね。
教師の地位と役割
日本の教師
- 学習指導要領に沿って教える
- 部活動の指導などもある
- 事務作業に追われがち
フィンランドの教師
- 修士号が必須の高学歴
- 社会的地位が高く尊敬される職業
- 教育内容を自分で決める自由度が高い
フィンランドでは教師になるのがとても難しく、倍率は10倍以上、実際にはそれ以上になることもあるのだとか。尊敬される職業とされているのですが、ただ、最近は一部の地域や特別支援教育などでは、教師の数が足りないこともあるようです。
家庭学習への考え方
宿題の量
- 日本:毎日しっかり宿題がある
- フィンランド:世界で最も少ない部類
でも読書量は
- フィンランド:世界トップクラス
家庭学習、勉強という面では、日本は一般的にはほぼ毎日のように宿題があり、予習復習という学習方法も定着しています。
フィンランドは、宿題は少ないけれど、とにかく「本をたくさん読む」習慣があるわけです。本を読むのは読解力や語彙力がつく以外にも、多くの知識を得られますし、さまざまな体験を知ることができます。想像したり、共感したり、主人公の気持ちを考えたり、あるいは、冒険やファンタジーの世界に入ることもできます。
読書は確かに、子どものさまざまな力を伸ばすことが可能です。
こうした違いを見ていると、教育に正解はひとつではないことがよく分かります。では、今のフィンランドはどこに向かっているのでしょうか。
現在のフィンランド教育はどこへ向かっている?

理想的に見えたフィンランドの教育も、時代の変化とともに新たな課題に直面しています。今、フィンランドで何が起こっているのでしょうか?
経済状況が教育に与える影響
2010年代以降、フィンランドは経済的に厳しい状況が続いています。
経済悪化の教育への影響
- 教育予算の削減
- 学校の統廃合が進行
- 一つの学校に多くの子どもを集約
- インフラ投資の削減
「教育にお金をかけられなくなった」という現実的な問題が、教育の質に影響している状況です。
デジタル時代の新しい課題
ICT(情報通信技術)の活用は期待される一方で、新たな問題も生んでいます。
プラス面
- オンライン学習の可能性拡大
- 個別学習のサポート技術向上
マイナス面
- スマホによる授業への集中力低下
- デジタル格差の問題

これって、日本のご家庭でも「子どもにスマホを持たせるか悩む」という問題と同じですね。
「PISAショック」からの立て直し
フィンランドでも学力低下に危機感を持ち、教育の見直しが始まっています。ただし、根本的な理念は変えずに、より良い方法を模索している段階です。
- 教育行政の反省と改善策の検討
- 学校現場からの改善提案
- 社会全体での教育議論の活発化
こうした試行錯誤を見ていると、「完璧な教育システムなんて存在しない」ということがよく分かります。でも、だからこそ学べることもたくさんあります。
フィンランド教育から学べること、日本の家庭にも活かせるヒント

フィンランドの教育を見てきて分かったのは、「理想的」と言われていた教育にも課題があり、常に改善が必要だということです。

でも、だからこそ私たちが学べることも多いんです!
日本の家庭で今日から始められること
1. 子どもの自立性を育てる
- 宿題のやり方を子ども自身に考えさせる
- 勉強時間を一緒に決める
- 「どうしてそう思うの?」と問いかける習慣
2. 読書環境を整える
- 親子で一緒に読書タイムを作る
- 子どもの興味に合わせた本選び
- 図書館に一緒に通う習慣
3. 子どもの幸せを最優先に
- 成績だけでなく、子どもの笑顔を大切に
- 一人ひとりの個性を認める
- 長期的な視点で成長を見守る
完璧を求めすぎない大切さ
フィンランドの教育を見ていて感じるのは、「完璧な教育システムなんて存在しない」ということです。どんなに素晴らしいと言われる教育にも課題があり、社会の変化とともに新たな問題が生まれます。
大切なのは、その時々で最善を尽くし、問題が見つかったら柔軟に改善していくこと。これは家庭での子育てにも言えることですね。
まとめ「わが家らしい教育」を見つけよう
フィンランドの教育システムをそのまま日本に持ち込むことはできません。でも、その考え方や理念を参考にして、それぞれの家庭に合った教育のあり方を見つけることはできます。
- フィンランドの「子ども中心」の考え方
- 日本の「努力と継続」の良さ
- 各家庭の価値観や事情
これらをうまく組み合わせて、「わが家の教育」を見つけてみてください。
子どもの可能性は無限大です。フィンランドの教育から学んだヒントを活かしながら、お子さんが自分らしく成長できる環境を、一緒に作っていきましょう。完璧でなくても大丈夫。愛情を持って見守ることが、何より大切なのですから!
編集:オンライン家庭教師GIPS
オンライン家庭教師GIPS
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