コロナ禍をきっかけに大きく普及したオンライン家庭教師。今では多くの家庭が利用するようになりましたが、「対面に比べて効果はあるの?」「どんな先生を選べばいいの?」と疑問をお持ちの保護者も少なくないでしょう。

今回は、中学受験指導のプロフェッショナルとして知られる井上先生に、オンライン家庭教師の魅力や活用法についてお話を伺いました。

井上秀和先生

ベストセラー『塾技100 国語』『文章読解の鉄則』『中学受験国語の必須語彙2800』『必須語彙ドリルA』『必須語彙ドリルB・C』の筆者である井上秀和先生。中学受験国語を中心に、オンライン家庭教師のプロとして多くの保護者・生徒から信頼され、合格実績等も多数。

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オンライン家庭教師の意外な強み

――最初に、オンライン家庭教師のメリットとデメリットについて教えてください。

井上先生: オンライン家庭教師のメリットはたくさんあります。まず、全国どこでも教えられるというのが最大の強みです。実際に私の生徒さんは、南は福岡から北は北海道まで、かつては海外のニューヨークやロンドンとも繋いでいました。物理的な距離の制約がなくなり、タイムラグもほぼありません。

自宅に呼ぶ家庭教師は、どうしてもエリア的に限定されるので、選択肢が狭くなります。一方でオンライン家庭教師は、日本中から先生を選べます。

保護者の方からすると、先生がご自宅に来るとなれば、たとえこちらがお断りしても飲み物や軽食を用意したり、あるいは玄関や子供部屋を掃除したりと、どうしても準備が必要となります。オンラインならば、こうしたことを気にする必要はありません。

もうひとつ、大きなポイントは「オンラインでは先生と生徒に距離がある」ことです。一見、デメリットに感じるかもしれませんが、距離がある点が実は安心につながります。最近は共働きのご家庭も多いですね。夕方だと保護者の不在時間に家庭教師の先生を招くこともありえます。いくら信頼できる先生であろうと、子どもと二人きりは心配でしょう。その点、オンラインでしたら、物理的に手が届かないので、たとえば17時からの予定だけど仕事の都合で帰宅が間に合わない時も、「子どもと先生だけになってしまう」と気をもまなくてすみます。

私自身、コロナ禍になるまでは対面指導派でした。それまでもSkypeなどで教えた経験はあったのですが、通信が途切れたり、タイムラグがあったりと、技術的なストレスがありました。でも、緊急事態宣言が出てZoomが普及してからは、状況がまったく変わりました。今は本当にどこにいても、ネット環境さえ整っていれば、対面同様に指導が可能です。

――オンライン家庭教師に対して「対面と違ってどうなのか」と迷っている保護者の方は少なからずいると思いますが、メリットは意外と多いですね。

井上先生: 保護者の方が授業を聞けるメリットもあります。私の授業では、保護者の方が同じ画面に入っていただいてもいいですし、画面をオフにして別室からモニタリングすることもできます。

子どもによっては親が近くにいることを嫌がる場合もありますが、オンラインならその辺りも柔軟に対応できます。画面オフにして、家事の合間にちらっと様子を見るといったことも可能です。子どもが学んでいる様子を見守れるのは安心感もありますし、先生の指導に疑問があれば後で聞くこともできるでしょう。

授業では、画面共有機能を活用して、生徒の書いた文章をその場で添削しています。ペン機能を用いれば、対面指導とほぼ同じ状態で「ここはこうだよね」と書きながら解説も可能です。

関連資料をすぐに表示できるのも、オンライン授業の良さですね。授業中に疑問や不明点が出た時に、「こんな画像があれば理解しやすい」となることがよくあります。事前準備はしていても、思いがけない質問をされた時、あの資料を見せたらわかりやすいはずだ、となるのですが、オンラインなら検索してパッと表示して解説できます。

オンライン家庭教師のデメリット

――では、オンライン家庭教師のデメリットはありますか?

井上先生:正直に言うと、オンライン指導では先生のスキルが対面以上に問われます。お子さんとの会話は大人同士より集中力が必要で、常に何をしているか気を配らないといけないんですよ。

私は、生徒さんには2台のカメラを用意してもらって、手元も見えるようにしています。そうしないと、画面の外でLINEをしていたり、別のことをしていたりすることもあるのです。対面だと先生がすぐ横にいますが、オンラインだとモニター越しなので、お子さんによっては少し気が緩むこともあります。だから常に注意深く見守る必要があります。

メリットにもデメリットにもなるのが、講師の質です。今の技術なら双方向のコミュニケーションは問題なくできます。うまくいかないとしたら、単純に先生のスキル不足です。オンラインだからこそコミュニケーションの取り方に気を配り、お子さんの個性や性格に合わせて、時には雑談も交えながら、授業への集中力を切らせないようにしなくてはなりません。

先生の中にも、対面が得意な人、オンラインが苦手な人がいます。もちろんその逆もあります。先生が自分の強みを理解して指導方法を選んでいればいいのですが、必ずしもそうではない場合も。オンライン指導に適した先生でなければ、それがデメリットになる可能性はあるということです。

塾と家庭教師の併用で効果的な受験対策

――井上先生は中学受験、特に国語のプロフェッショナルですが、生徒さんは、いわゆる進学塾と併用している方が多いのでしょうか?

井上先生: そうですね、私の生徒はほとんどが塾に通っています。私が国語講師だということも関係していますが、4科目すべてを家庭教師だけでカバーするには費用がかさみますからね。

家庭教師だけで中学受験はできますか?」とよく質問されますが、結論からいうとできます。

ただし、その場合に重要なのは、質の高い先生を確保することです。単なる教科指導だけでなく、今年の入試傾向や最新情報をしっかり把握していて、志望校選びの相談や模試結果の分析まで、すべてお任せできるようなプロフェッショナルな教師が必要です。塾と同等レベルの指導を同じくらいの頻度で家庭教師に依頼しようとすると、どうしても費用は高くなります。

実際に「月に100万円かかってもいいからオンライン家庭教師だけで中学受験を」というご家庭もあります。そこまで極端でなくても、経済的余裕があれば、家庭教師だけで中学受験を成功させることは十分可能だと思います。逆に言うと、塾とオンライン家庭教師をうまく活用すれば、費用を抑えて必要十分な指導を受けることもできます。

――塾と家庭教師を併用する場合の効果的な使い方はありますか?

井上先生: 家庭教師をどう使うかは、何をやってもらいたいかをはっきりさせることが大切です。

たとえば、通っている塾でどうも国語の指導だけが良くない、あるいはお子さまと先生が合わない、特に苦手としていて塾の集団指導についていけないといったこともあるでしょう。そういう場合、家庭教師で国語をしっかり補強すると、受験でも点を取りやすくなります。

——井上先生は、主に国語を指導していらっしゃいます。国語は勉強しても、なかなか成績が上がらないと言われますが。

井上先生:国語は算数などと違って一気に伸びにくい科目だと思われがちですが、それは単に国語をしっかり勉強していないだけです。

特に中学受験の国語は、いわゆる学校の国語とはまた別の対策が必要です。

読解力の伸ばし方もよく聞かれますが、受験においての「読解問題」は、ただ読む力があればいいわけではありません。長文読解の抜き出し問題や空欄補充問題、要約の抜き出し問題などは、やはり解き方のコツやテクニックがあります。本を読むのは良いことですが、それとは別に受験のための国語の勉強が必要だと思います。

成績が伸びる子の特徴と保護者の関わり方

――井上先生から見て、どのようなお子さまは成績が伸びやすいと感じますか?

井上先生: ひと言であらわすなら、素直な子です。要領が良くなくてもまったく問題ありません。素直であれば伸びます。ある生徒さんは国語の偏差値が最初39だったのが、2年間で偏差値74まで上がり、グノーブル(難関校受験を対象とした塾)のテストで国語2位になりました。

この生徒さんは、率直に言えば、要領が悪く、不器用な面もありましたが、とにかく素直でした。加えて、大きかったのが私を信頼してくださったお母さんの存在です。

お母さんは、常に授業を一緒に聞いてくれて、子どもの様子を見守っていました。マイペースなお子さまの性質をよくご存知だったのでしょう。私が話したことを繰り返したり、復習してくれたりしていました。

――保護者の関わりも重要なのですね。

井上先生: 親御さんが講師を信頼していることは子どもにも自然と伝わります。そうした家庭では良い循環が生まれやすいのです。逆に、親が先生に不安や不信感を抱いていると、それも子どもに伝わってしまい、子どもも先生の話をきちんと聞く気になれません。ですから、まず保護者ができることは、信頼できる先生を見つけ、その先生を信じてついていくことです。

5年生くらいになると、ちょっと反抗的になるお子さんも多いですが、興味深いことに親の言うことは聞かなくても「先生が言ったこと」はきちんとやるケースもよくあります。

ただし、家庭教師でも塾の先生でも、残念ながら指導力に不安のある方もいます。もし信頼できないと感じたら、遠慮せずに先生を変更してください。

また、子どもと一緒に明確な目標を設定することも重要です。たとえば「慶応に行きたい」なら、親子で「慶応に合格するために何をすべきか」を具体的に話し合い、共有しましょう。

とはいえ、最後に決めるのは子ども自身です。やるかやらないかは、最終的には子どもの意思にかかっています。

オンライン家庭教師の選び方と活用法

――オンライン家庭教師はどのように選べばいいのでしょうか?

井上先生: 今はSNSで発信している人も多いですから、先生の投稿をいろいろ見て、人間性や教え方の特徴などをつかむといいですよ。また、契約する前に、オンラインでも面談や相談、体験などがあるはずです。しっかり時間をとって、納得のいくまで話をするのも大切です。

できれば実際の授業を一度受けてみてください。どうしてもオンライン授業が合わない子もいるので確かめることと、先生との相性を見るためにも、体験授業は良い方法です。

要は、お子さんにあった指導や形態を選ぶこと。しかし、実際に試してみないと、お子さんに合う先生かどうか、オンラインのスタイルが合っているかどうかはわかりません。ですから、事前に先生の情報をなるべく集めて、なおかつ、授業を実際に受けてみる、せめてオンラインで繋いで親子ともに先生と話してみる。そして、合わないと思ったら、ためらわずに他の先生を探しましょう。  

――オンライン家庭教師を効果的に活用するコツはありますか?

井上先生: 家庭教師を活用するポイントは、保護者側が何をやってもらいたいかを明確にすることです。「塾で苦手な国語の補強をしてほしい」「志望校対策として作文力を上げたい」「基礎から徹底的に教えてほしい」など、具体的な目標を持っておくと効果的です。

私自身は「なんでもやります」と生徒さんには伝えていますが、同時に「お子さんの状況を見て、こういう勉強法がいいですよ」という提案もします。ここで大切なのは、保護者と先生の信頼関係です。先生の提案を信頼して任せるのか、あるいは「いや、うちの子にはこの方法が合っていると思う」と別の方法を希望するのかは、最終的には家庭の判断になります。

また、中学受験では「戦略」が非常に重要です。これは大学受験や高校受験とは異なる点です。たとえば、「どの学校をいつ受験するか」「どの科目に重点を置くか」「模試の結果をどう分析して対策するか」など、適切な判断が必要になる場面が多々あります。そこで保護者の「見る目」が問われるのです。

先生を選ぶ際も同様で、「この先生は本当にうちの子に合っているのか」「この先生の教え方は効果的なのか」を見極める力が重要になります。結局のところ、オンライン家庭教師を効果的に活用するには、保護者が主体的に関わりながらも、信頼できる講師にはしっかりと任せるというバランス感覚が大切なのです。

――なるほど、保護者も関わりつつ、先生にお任せする、そのバランスがポイントなのですね。では、井上先生、今後の展望などはありますか?

井上先生: 引き続き教えることを楽しみながらやっていきたいです。実は集団授業も好きなので、対面での特別授業をどこかで行いたいと思っています。また、低学年向けの国語の本も書ければと考えています。

ただ、私自身は現役の講師でいたいと考えており、経営よりも教えることそのものに興味があります。講師という仕事は「職人」だと思っていて、最後まで完成することはない。これからもずっと、「まだまだ」と思いながら精進していきたいですね。

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井上先生へのインタビューを通じて、オンライン家庭教師が持つ多くの可能性と効果的な活用法が見えてきました。物理的距離を超えて質の高い指導を受けられることは、特に中学受験を控えたご家庭にとって大きなメリットになるでしょう。

大切なのは、子どもと相性の良い、信頼できる先生を見つけること。実際に体験授業を受けたりしながら、お子さんに合った先生を探してみてください。そして何より、親御さん自身が先生を信頼し、お子さんと一緒に目標に向かって歩んでいくことが、中学受験の成功への近道なのかもしれません。

編集:オンライン家庭教師GIPS

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