都立中高一貫校とは、中学・高校まで一貫して教育を受けられる東京都の公立校です。

都立中学受験を検討し始めたところで、「都立中学受験ってどうなんだろう?」という疑問にお答えするため、この記事では、都立中高一貫校の概要、最新の倍率、学費や受験のポイントについて解説します。

都立中高一貫校とは

都立中高一貫校(都立中高一貫教育校)は、6年間の一貫教育で、将来のリーダーを育成することを目的としています。

各校それぞれ特色があり、なおかつ高いレベルの指導により、国立をはじめいわゆる難関大学の合格率も高い傾向があります。また、公立ですから学費も抑えられています。

「公立中高一貫校」「都立中学」など、呼び方はいろいろですが、正確には都立の中高一貫校には2種類あります。次では、それぞれの違いを説明します。

都立中高一貫校は2種類ある

(1)中等教育学校

6年間を、最初の3年(中学)を前期課程、後の3年間(高校)を後期課程とし、一貫教育をひとつの学校で行います。高校にあたる後期課程からの入学者の募集は行いません。

  • 小石川中等教育学校
  • 桜修館中等教育学校
  • 立川国際中等教育学校
  • 南多摩中等教育学校
  • 三鷹中等教育学校

(2)併設型(都立中学校+都立高校)

都立中学と都立高校を接続し、6年間の一貫教育を行います。都立中学の生徒は接続している都立高校へ、そのまま入試なしで進学できます。現在は高校段階での生徒募集を停止しているため、実質的には中学受験時のみの入学となります。

  • 白鸚高校・附属中学校
  • 両国高校・附属中学校
  • 武蔵高校・附属中学校
  • 富士高校・附属中学校
  • 大泉高校・附属中学校

参考:都立中高一貫教育校とは/東京都教育委員会

都立中学(都立中高一貫校)の倍率【令和6年度最新】

令和6年度 都立中高一貫校の倍率

小石川中等教育4.41倍
白鸚高等学校附属4.20倍
両国高等学校附属4.38倍
桜修館中等教育4.41倍
富士高等学校附属3.54倍
大泉高等学校附属4.17倍
南多摩中等教育3.73倍
立川国際中等教育4.07倍
武蔵高等学校附属2.63倍
三鷹中等教育4.81倍
※一般枠募集のみ抜粋

出典:令和6年度東京都立中等教育学校及び東京都立中学校入学者決定応募状況/東京都教育委員会

都立中高一貫校は、一時期は6〜7倍という非常に高い倍率でした。ただ、ここ数年は都立中高一貫校の人気はいったん落ち着いているようです。

都立中学のメリットのひとつが「学費が安い」ことです。東京都では高校の授業無償化などが実施されており、私立中高一貫校や附属校に比べれば「かかる費用」は抑えられるものの、以前ほどのメリットは感じられなくなっているようです。

また、パンデミックにおける対応の早さ、ICT教育(デジタルやITテクノロジーを活用した教育)の導入、充実した施設などにおいて私立校の良さが再認識されていることも、志望者の減少に影響しているのではないでしょうか。

都立中高一貫校は入学してからも、大学受験に向けて生徒自らが意欲を持って取り組むことが求められる面があります。子どもの性格や資質によっては、「面倒見の良い私立校」を望む層が以前より増えている印象もあります。

なお、都立中学の倍率が下がっているから合格しやすくなったというわけでもないので注意が必要です。依然として受験の難易度は高いと言えます。

都立中高一貫校の学費は実際に安いのか?

学費は、進路選びにおいて保護者にとって大きなポイントのひとつです。中学受験の学費というと、入学時の費用ばかりに目が行きがちですが、実際には6年間の継続的な支出を考える必要があります。家計の状況を踏まえ、無理なく通える学校を選ぶことは重要です。

では、実際に都立中高一貫校の学費は私立中高一貫校や私立大学附属校と比べて安いのでしょうか?

一例として、小石川中等教育学校の学費を見ていきましょう。

小石川中等教育学校では、前期課程(いわゆる中学)は義務教育にあたるため、入学金や授業料はかかりません。

しかし、1年次で約34万円、2年次で約43万円、3年次は20万円の学校徴収金がかかります。

この徴収金* には、3年次に行われる2週間のオーストラリア語学研修費用(予算46万円)の積立分も含まれます。その他もろもろ含め、3年間の合計で約120万円かかるとなっています。なお、都立白鸚高等学校・附属中学校の公式サイトでは、3年間合計で約93万円、中学3年次の研修旅行先は国内となっており(海外に変更の可能性ありとも記されている)、一般的に言うところの「修学旅行」の内容によって徴収金の差があるようです。

私立中学の学費は年間50〜80万円程度、3年間で学費のみを単純計算をしても150万円〜240万円です。加えてPTA会費や積立などもあり、文部科学省の「子供の学習費調査」では、年間で320万円程度となっています。

私立中学の授業料助成もスタートしていますが、学費にプラスされる費用も考慮すると、私立中学と比べて、都立中高一貫校の方が家計に対する負担はかなり低いと言えます。 高校においても助成などがあるにせよ、基本的には私立校よりも都立中高一貫校の方がかなり安いと言えます。

*徴収金とは、副教材・修学旅行等積立・模擬試験受験料など保護者が学校に納める費用。

参考:
小石川中等教育学校必要経費【学費】/都立小石川中等教育学校公式サイト
授業料(中学校)/都立白鸚高等学校・附属中学校公式サイト
子供の学習費調査

都立中学(都立中高一貫校)に通うメリット

  • 都立(公立)であっても私立同様に6年間の一貫教育を受けられる
  • 私立学校に比べて学費が低い
  • 多くの都立中学は独自のカリキュラムや教育プログラムを提供している
  • 進学実績も良い傾向がある

学費以外の面でも、都立中学のメリットはいくつかあります。特にその教育プログラムは注目すべき点で、それぞれ特徴があります。

たとえば、小石川中等教育学校は、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)で、前期課程(中学)から物理・科学・生物・地学の専門教員が指導を行っています。また東京大学をはじめ、難関大学へ複数の合格者を排出しています。 武蔵高等学校附属中学校は、少人数・習熟度別の授業を行っており、45分7時間授業の実施などハイレベルな教育環境を提供しています。東大や東工大、慶応など進路実績も高く評価されています。

都立中学(都立中高一貫校)受験の特徴とは

都立中高一貫校の受験では、次の4つの方法があります。

  • 報告書
  • 面接
  • 作文
  • 適性検査(共同作成問題と各校独自問題)

一般枠では多くの場合、報告書と適性検査になります。適性検査にも、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと種類があります。 私立中学を受験する時には「入学試験」がありますね。でも、都立中学は公立校です。中学は義務教育の期間ですから、「学力を試験して合否を決める」ことはできないのです。そのため、一貫教育に「適性しているかどうか」を見極める検査を行う=適性検査となっています。

適性検査については、さらに詳しい説明があるのでこちらを参考にしてください。

都立中学受験(都立中高一貫校)を選択する前に考えておきたいこと3つ

(1)都立中学(都立中高一貫校)と私立中学「試験内容の違い」

(2)報告書について

(3)志望校選びと進路に注意が必要

(1)都立中学(都立中高一貫校)と私立中学「試験内容の違い」

まずは、都立中学受験は私立校受験とは大きく違うと認識しておきましょう。

都立中学受験は前述したように「試験」という位置づけではありません。出題範囲も「小学校6年間で習うもの」に限定されていますが、科目ごとというよりも、教科横断的な出題が多く見られます。適性検査は年度ごとに、あるいは学校によって傾向がガラリと変わることもあるのですが、いずれにしても記述式が多く、思考力や表現力も必要で対策がしづらいため、難易度が高いと捉えるむきがあります。

一方、私立中学受験では、2教科・4教科の入試問題が出されます。学校のレベルにもよりますが、通常の公立小学校の勉強では対応しきれない内容もあります。算数でいえば、いわゆる「旅人算」「周期算」のような特殊なものや、かなり複雑な図形問題なども出題されます。しかし、こうした「私立中学受験によくでる問題の解き方」を積み上げていけば、超難関校は別にしても、ある程度は合格圏内が見えてくるという面もあります。

(2)報告書について

都立中学受験では、適性検査のほかに「報告書」が結果に一定の影響を及ぼします。報告書はいわば高校受験における内申書に近く、学校の先生にお願いして書いてもらいます。

内容は、成績のほか、小学校での活動や欠席日数等なども含まれます。

出典:都立中高一貫教育校/東京都教育委員会

上記は先生用の見本となっている「報告書」のフォーマットです。総合的な学習の時間の記録がかなり詳しく記入されていますね。また、総合所見では、委員会活動や表彰・成果、日頃の行動などについて書かれています。

では、報告書の内容はどれくらい合否結果に影響するのでしょうか?

「報告書が30:適性検査が70」といったように配点の比率は各校によって違います。しかし、報告書が合否を左右するかもしれない重みを持っていることは共通しています。

一般的に私立中学受験は当日の試験結果で合否が決まります。しかし、都立中学受験では、報告書の内容が配点に含まれることを考慮し、日頃から学校の成績を向上させるように留意する必要があります。

活動については、クラスの係や委員会活動に積極的に取り組む、読書感想文や絵画、スポーツなど得意分野で表彰など成果を残すといったあたりがポイントになります。

ただし、お子さまに「報告書が重要だから、クラス委員に立候補しなさいよ!」と無理強いするのは本末転倒です。学校の先生もお子さまの良いところや得意なところにフォーカスして書いてくれますから、親としては神経質になりすぎないようにしたいですね。

報告書の内容としては、やはり成績は重要です。学校のテストでは上位レベルを保てるよう、家庭学習をしっかり行うことが大切です。

(3)志望校選びと進路に注意が必要

都立中学受験は一斉に同じ日程で行われます。つまり、併願ができません。めざす都立中学ひとつのみを受験することになります。

都立中学1校のみを受験し、思っていたような結果が出なかった場合、都立中学で別の学校を改めて受験することはできないため、そこで「地域の公立中学に進む」選択肢しか残らなくなります。

もし、地域の公立中学進学を考えていないのであれば、都立中学受験では私立校との併願も考えたほうが安心です。

また、最近は第一志望を私立中学にし、なおかつ都立中学も受験するパターンも増えています。

都立中学受験のみに絞るときには「合格するのがとても難しいこと、うまくいかなかったら地元の公立中学へ進むこと」をわかりやすくお子さまに説明し、本人がどう思うかをじっくり聞いてあげてください。中学受験は親の意向が強く影響しがちですし、小学生には判断できない、あるいは日によって考えが変わるというのもよくあります。それでも、進路については、親子で何度でも話し合いましょう。

まとめ

都立中高一貫校は、私立中学受験とは違うことを、まず大前提として把握しておいてください。都立中高一貫校の出題傾向や対策は、なかなか難しいため、できれば都立中学受験に強い家庭教師や塾の担当者のサポートを得るほうが安心です。

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編集:オンライン家庭教師GIPS

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